なぜJOA(日本オストミー協会)は衰退しつつあるのか?~課題と再生への道~

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はじめに

本記事における「 JOA 」とは、公益社団法人 日本オストミー協会のことで、Japan Ostomy Association, Inc.の略称です。 

まずは、JOA公式ホームページで開示されている決算報告書の数字をグラフ化したもの(下図)を見てください。

出典:JOA公式ホームページ 決算報告書より 正味財産増減計算書をKenUがグラフ化

特筆すべきは、平成24年度(2012)から令和4年度(2022)までに、正会員(オレンジ折れ線)および賛助会員(グレー折れ線)の会費収入が約60%まで落ち込んでいることです。
このことは、会員数及び法人等外部支援の減少を端的に示しています。

この期間のオストメイト人口は、実際には減少しているわけではなく、「 ぼうこう・直腸機能障害 ” における身体障害者手帳交付台帳登載数(永久人工肛門増設者数に該当)では、3万4千人増加しています。
つまり、JOAに加入するオストメイトが減ってきているというのが現実のようです。

また、講演会等の事業収益、補助金、助成金、寄付金も、減少の一途をたどっており、JOAの活動自体も活力が低下していることが伺えます。

では、何故JOAの元気がなくなってきたのか?
以下に、考察するとともに、再生の道を探ります。

※関連記事(参照リンク)『オストメイト人口の現在と将来・人工肛門保有者数の推計方法

JOA衰退の原因は?

① 情報の価値が相対的に低下した

私が人工肛門を造設した当時(2014年)、インターネット上のオストメイト関連情報はごく一部に限られていました。
また、有益と思われる情報はほとんどありませんでした。
よって、かつてはJOAの会報や会合が、オストメイトにとって数少ない情報源だったかも知れません。

しかし、インターネットやYouTubeの普及により、ピンポイントで有益な情報が得られる時代になり、「無料で高品質な情報が得られる中で、有料の情報を得る意義が薄れた」と感じる人が増え、会員離れが進んだと考えられます。

公式ホームページを見ると、入会することで得られる情報やメリットのアピールが不足しているように感じます。
入会案内リーフレットは、協会の活動が紹介されているのみで、魅力が十分に伝わっていないように感じられます。

②時代に適応しきれなかった運営体制

公益法人であるがゆえに、JOAの活動には意思決定の遅さや柔軟性の欠如があった可能性があるのではないでしょうか?
事業内容も硬直化しており、現代のニーズに合わせた活動内容の深堀ができていない可能性もあります。
SNSや動画といった現代的な手段の活用も進んでいません。

スマートフォンやPCの扱いに慣れておらずSNSでの情報入手が困難な高齢会員が多いことも事実なので、これまでの情報提供手段を一概に否定できませんが、今後はそのような会員は減少していくことが予想されます。

JOA継続のために ~これからの役割と可能性~

日本オストミー協会(JOA)は、長年にわたり全国のオストメイトに寄り添い、QOL(生活の質)の向上を支えてきました。
行政への働きかけ、装具支給制度の改善、各種相談支援、会報の発行、イベントの開催など、その実績と貢献は多大です。

しかし現在、少子高齢化や情報の個人発信の広がりにより、会員数の減少や活動の停滞が懸念されています。
それでもなお、JOAは今後も必要な存在です。
なぜなら、制度や支援を充実していくには、個人や企業ではなく、公益性の高い団体による継続的な働きかけが不可欠だからです。

そこで、持続可能な組織運営に向けて、私からアイデアを出してみましょう。

– ネット会員制度の創設

従来の正会員とは別に、紙の会報誌を郵送しない「ネット会員」を設け、選択できるようにします。
ネット会員には以下のメリットがあります:

  • 郵送費や印刷費が不要なため、安価な年会費
  • 会報はPDF形式で配信、いつでも閲覧可能
  • タイムリーな情報はメールマガジンで配信

すると、若い世代や紙媒体を必要としない会員層を取り込めるかもしれません。
もちろんネット会員であっても交流会等への参加も可能です。

– 医療格差の是正事業

ストーマ外来のない地域では、オストメイトが適切なケアを受けられないケースが増えています。
また、時間と労力をかけてストーマ外来に通院を余儀なくされるオストメイトも存在します。
こうした状況をふまえ、WOC(皮膚・排泄ケア)認定看護師による一般看護師・介護士向けの講習会を、地域と連携して企画・開催します。

地域の訪問看護・在宅介護の現場でも適切なストーマケアが可能となり、オストメイト支援の地域的広がりと、ケアの質的向上が期待されます。
また、講習参加者に対して「支援会員」制度を用意すれば、参加費=会費として組織の運営資金にもつながります。

– メーカー技術者による説明会

ストーマ装具やケア用品は日々進化しています。
メーカーの開発技術者を招いた製品紹介や使用体験の共有などにより、製品を正しく理解し選択するための機会を設けることも有意義な活動となるでしょう。
製品の意図しない使われ方、誤使用の予防や、効果的な活用につながります。
さらに、前述の支援会員にも有益な情報を共有することができます。

– がん相談支援センターとの連携

ストーマを造設する前に情報を得られれば、多少の不安は和らぐと思います。
よって、術前の情報提供は、患者にとって大きな安心材料となります。
全国のがん診療連携拠点病院などに設置されている「がん相談支援センター」と連携することによって、有意義な情報提供を可能にします。

JOAに期待すること

やはり、行政や民間団体への働きかけには期待します。
すでに私のブログで発信していることを整理すると以下のとおりです。

– 自治体間格差の是正

自動車税・自動車取得税の減免制度(身体障害者手帳4級減免:あり・なし)、ストーマ装具の捨て方(燃えるゴミ、燃えないゴミ)、日常生活用具給付基準(自己負担:あり・なし、 対象品目:アクセサリー類)、ストーマ装具名称(畜便袋、ストーマ装具、消化器系)など、自治体間でばらばらです。
費用面では、自治体の財政状況との兼ね合いがあるため、統一は難しいかも知れませんが、現実的に是正可能な面は多々あるかと思います。

例えば、JOAの東京支部ホームページのトップには、「ストーマ装具の捨て方に注意を!」「どんな時でも、パウチの中に汚物を残さないように…」などと記載があります。
しかし、装具面板に残った便の除去は困難であり、衛生面を考慮しても、家庭内でパウチ内部を洗浄するのは現実的ではありません。

私が居住している自治体では、中身の廃棄は必要ですが洗浄までは要求されておらず、燃えるゴミとして出せます。
ちなみに、ペットの糞も燃えるゴミとして廃棄できます。(※東京23区ではペットの糞は燃えるゴミとして出せないとのこと)

– オストメイトトイレ機能の基準化

現在、「オストメイト対応トイレ」と表示されているにもかかわらず、実際には通常の洋式便器に尿瓶洗浄用の小さな水道管が付いているだけという施設が少なくありません。
これではストーマ装具の交換やストーマの洗浄は困難であり、オストメイトにとって実用的とは言えません。

このような現状を踏まえ、「オストメイト対応トイレ」と表示してよい設備の機能要件を明確に定める必要があります。
基準を満たした設備にのみオストメイトマークを表示できるようにすることで、誤解を減らし、オストメイトの安心と利便性を向上させることが期待されます。

※関連記事(参照リンク)『オストメイト対応トイレ使い方講習があれば参加してみたいかも?

– アンケート項目のブラッシュアップ

JOAでは『オストメイト生活実態基本調査』を定期的に実施していますが、その内容をさらに実用的かつ行政に対して説得力をもつものに改善する余地があります。

たとえば、以下のような具体的な生活実態に関する質問を加えることで、オストメイトが直面する課題の把握と政策提言の根拠として、より有効なデータが得られると考えられます。

  • 装具交換時に使用するアクセサリの有無と種類(剥離剤、皮膚被膜剤、ストーマパウダー、ストーマシール、フランジエクステンダー等)
  • 公共浴場での処置の有無とその方法
  • 装具からの便排出の実処理時間と時間帯の傾向
  • 消臭対策の実施有無と使用している製品・工夫
  • 家族や会社の協力体制や心理的・実務的な支援の有無

アンケートを通じて、より多様でリアルな生活状況を把握し、オストメイト本人はもちろん、行政・企業・医療福祉関係者との連携強化に役立てるべきです。

筆者とJOAの係わり

じつは、私はJOAに加入していません。
人工肛門造設当時、私は医薬医療メーカーに在籍しており、それら新製品開発業務に携わった経験から豊富な情報・知識を持ち、情報収集スキルもあり、自身でストーマケアを学習する能力や様々な工夫を考える能力を有するため、JOAから情報を得る必要はありませんでした。

そして逆に、私からオストメイトに向けて、実験、検証、科学に基づく有益な情報をブログやYouTubeで発信するようになりました。

また、JOA協賛の患者会から、人工肛門造設後も水泳をしていることの発表依頼があり、オストメイトの会合において登壇したことがあります。
そのときの実感は、有意義ではありませんでした。
というのも、参加者の多くが高齢で経験豊富な方々だったため、私の発表内容が響かなかったと感じたからです。

そして、「これから人工肛門造設手術を受ける不安を抱えている患者や家族に向けた情報共有がより有意義ではないか?」と考えるようになり、ブログで発信しています。

その他、SNSでJOAの会合に参加した人の意見を集めました。
「わからないことが知れて良かった」という意見がある一方で、一部では「病気歴を競うような雰囲気」や「上から目線」といった、交流に距離を感じたという声も見受けられました。

おわりに

以上、JOAの現状、継続に向けたアイデアや期待することについて述べました。
今後、会員のみなさまに有意義な情報提供や、QOL向上に向けた活動が、さらに発展していくことを願っています。

筆者プロフィール

KenU (ケンユー)

◆病歴
直腸がんにより、2014年5月23日に直腸と肛門を切除し、永久人工肛門(コロストミー)を造設

◆業務経歴
大学卒業後に東証プライム市場上場の研究開発型総合材料メーカに入社
①研究開発 (R&D) 業務:医薬品、医療材料・関連製品、機能性食品、バイオテクノロジー関連製品などの開発に携わる
②品質保証業務:医薬品・医療機器分野で、GMP責任者として品質保証システム構築やPMDA (独立行政法人 医薬品医療機器総合機構) の査察対応などを経験

◆現在の状況
2022年10月末に会社を定年退職し、現在無職。


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