オストメイト人口の現在と将来・人工肛門保有者数の推計方法

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TV番組などで何かと紹介されるオストメイト人口。
しかし、ほとんど正確に伝えられることがありません。
そこで、私KenUが、推計の仕方について記事にします。


ストーマ(人工肛門・人工ぼうこう)には、永久的なものと一時的なものがあります。
永久的なストーマを造設した場合には、障害者手帳の交付を受けることができます。
したがって、政府統計の ” ぼうこう・直腸機能障害 ” における身体障害者手帳交付台帳登載数を調べれば、永久ストーマ保有者数(以下、「永久オストメイト人口」という。)がわかります。
ただし、統計データの公開まで数年のタイムラグがあるので、現時点の人口は統計解析をして推定します。


現在、2021年時点で、公開されているデータは2019年分までです。
そして、2019年の永久オストメイト人口は21.97万人になります。

出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)(https://www.e-stat.go.jp/)「ぼうこう・直腸機能障害に関する身体障害者手帳交付台帳登載数」(厚生労働省)を基にKenU作成

上のグラフでは、2010年以前と以後では、増加の傾きに変化があるように見えます。
そこで、2010年~2019年の線形近似により2021年の永久オストメイト人口を推定すると、22.70万人になることがわかります。

一方、2003年~2019年のデータの2次多項式近似でも、下のグラフのように高い相関が得られます。
その場合、2021年の永久オストメイト人口は22.13万人と推定できます。

出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)(https://www.e-stat.go.jp/)「ぼうこう・直腸機能障害に関する身体障害者手帳交付台帳登載数」(厚生労働省)を基にKenU作成

では、上の二つのグラフから、2025年の永久オストメイト人口を推定してみると、どうなるでしょうか?
線形近似では、24.26万人、2次多項式近似では、22.55万人になります。
なので、2025年には、23万人まで増加すると見積もって良さそうです。

さて、永久的人工肛門保有者人口は分かりましたが、一時的人工肛門保有者人口はどうやったら推計できるでしょうか?

大腸がん(直腸がん、結腸がん)の罹患数と死亡数を見てみます。

出典:国立がん研究センターがん情報サービス(https://ganjoho.jp/public/index.html)「がん統計」(厚生労働省人口動態統計)を基にKenU作成

直腸がんの手術では、永久的な人工肛門を造設しない場合でも、一時的人工肛門になります。
直腸がんの罹患者数は、年間約5万人、死亡者数は年間約1.5万人。
その差は3.5万人です。
そのうち、線形近似から求めた年間の身体障害者手帳交付台帳登載数の増加数4000を差し引いた、約3.1万人が一時的ストーマ保有者になると推定できます。

結腸がんの手術でも一時的人工肛門を造設する場合があるかも知れませんが、無視します。
すると、2021年の永久的人工肛門保有者人口と直腸がんによる一時的人工肛門保有者人口を合わせた、日本国内の全オストメイト人口は、25万人以上になります。

【補足】
他に人工肛門になる原因には、婦人科がんがあります。
ただし、人工肛門を造設するケースは少ないので、オストメイト人口の推計では無視します。
参照リンク→『婦人科がんで人工肛門になる人口はどれくらいか?

2件のコメント 追加

  1. YOKOYOKO より:

    丁寧に計算していただき、わかりやすかったです。ありがとうございます。

  2. KenU より:

    2023年時点で、2021年までの政府統計 ” ぼうこう・直腸機能障害 ” における身体障害者手帳交付台帳登載数のデータが出ていて、225,010件となっています。
    記事中の線形近似シミュレーション結果(22.7万)に近い数値になっています。

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