Panasonic ニオフ ( nioff ) 消臭潤滑剤の成分の推定と考察

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先日、『国内未発売のホリスターm9消臭液滴剤を輸入して使ってみた』という記事を執筆した際、気づいたことがありました。
ほとんどのストーマパウチ用の消臭潤滑剤は、ラベルに成分や添加剤が詳しく記載されています。
しかし、パナソニックのニオフのラベルには、成分記載が曖昧で、情報の透明性に欠けていると感じました。
そこで、特許などを調査し、ニオフの配合成分を推定した結果を紹介します。


私KenUは、2018年にニオフを試用したことがあります。
内容成分は「銅系消臭成分、潤滑成分、精製水、界面活性剤」となっていて、配合されている具体的な化学物質名が不明です。

Panasonic消臭潤滑剤nioffニオフ


なにか秘密にする理由でもあるのでしょうか?
ニオフの銅系消臭成分とは、どんな銅なのでしょうか?

特許からの推定

ニオフに関する特許を検索したところ、平成30年(2018年)9月20日に公開されている『ストーマ装具用潤滑消臭組成物及びストーマ装具キット』を発明の名称とする公開特許公報を特定しました。

  • 特許出願番号:特開2018-143650
  • 出願人:パナソニックIPマネジメント株式会社
  • 発明者:パナソニックエコソリューションズ化研株式会社内 S氏、Y氏

この特許を基に、ニオフの成分を推定しました。
その結果は、次のとおりです。

  • 銅系消臭成分:グルコン酸銅
  • 潤滑成分:カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、プロピレングリコール(PG)
  • 非イオン界面活性剤:ポリオキシエチレントリデシルエーテル(トリデセス-10)
  • 両性界面活性剤:ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン(コカミドプロピルベタイン)
  • 防腐剤:ブロノポール(2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1, 3-ジオール)
  • pH調整剤:クエン酸

プレスリリースからの確認

パナソニック ホールディングス株式会社は、2018年1月19日にプレスリリース「nioff(ニオフ)シリーズからオストメイトの方向けの消臭潤滑剤を発売」を公開しています。
その中で「素材のすべてを、肌にやさしい材料で構成」として、内容成分の使用事例を次の表のように挙げています。

内容成分使用事例など
銅系消臭成分(銅塩)食品添加物
潤滑成分(セルロース) 食品添加物
界面活性剤ベビーシャンプーなど
水(精製水)
Panasonic HD, 製品・サービス ❘ プレスリリース ( 20018.1.19 ) より引用

今回推定した成分、グルコン酸銅、CMC-Na、PGはいずれも食品添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)に収載されており、食品への添加が認められています。
コカミドプロピルベタインは、牛乳石鹸共進社のキューピーベビーシャンプー泡タイプにも使用されています。
また、トリデセス-10は医薬部外品原料規格2021に収載されています。
上記のことから、プレスリリースに示された使用事例と推定した成分は概ね一致します。

その他に、プレスリリースでは、ニオフはパラベンフリーであることが示されています。
ニオフの特許には、他社の消臭潤滑剤で一般的に使用される防腐剤であるパラベン(パラオキシ安息香酸エステル)の記載はなく、防腐剤の具体例としてブロノポールの使用が好ましいと記載されています。
実際にニオフでブロノポールが使用されているか、またどの防腐剤が使用されているかについては、現時点では明確にされていません。

論文からの懸念点

ニオフについて、特許情報から推定した成分は大きく外れていないと考えますが、使用されている防腐剤が不明なため気がかりです。
もしブロノポールが含まれている場合、以下の懸念があります。

ブロノポールは分解により有毒なホルムアルデヒドを放出し、分解は主として温度とpHに依存します1)
希釈する緩衝溶液のpHはホルムアルデヒドの放出に最も影響を与える因子であり、室温においても酸性条件に比べてアルカリ性条件で放出は著しく増加します。
なお、過去からのKenU自身による実測では、他社消臭潤滑剤のデオールおよびデオファインがpH8.5~9.0、アダプトがph7.0といったアルカリ性~中性に対して、ニオフはpH5.5の酸性でした。


しかし、ストーマ表面の粘液は通常アルカリ性を示す2) ため、これがブロノポールの分解を促進する要因となる可能性があります。

また、ブロノポールは分解により亜硝酸イオンを放出することが知られており、亜硝酸イオンはアミンと反応して発がん性のあるニトロソアミンを生成する可能性があります。
ストーマから排泄される糞便には、腸内細菌によって食物中のタンパク質やアミノ酸が分解される過程で生成されたアミンが含まれているため、ストーマパウチ内で亜硝酸イオンが放出されるとリスクが生じると考えられます。

なお、ホルムアルデヒド、ニトロソアミンともに、国際がん研究機関(IARC)においてグループ2A(ヒトに対しておそらく発がん性がある)に分類されています。
また、ニトロソアミンについては、近年、医薬品への混入が問題視され、欧米の規制当局(FDA, EMA)からは混入防止に関するガイダンスが提供されている他、日本の厚労省でも医薬品におけるニトロソアミン類混入リスクへの対策が発出されています。

もしニオフにブロノポールが使用されているのであれば、上記で危惧したメカニズムによる反応が起こる可能性やその確率について十分に検討され、安全性を確保した上で製品設計されていると信用することができるのかどうかも気がかりです。
この点について、製品設計者による明確な説明や検討が求められるのではないでしょうか?

補足

興味深いことに、同じニオフブランドであるにもかかわらず、他のラインナップ製品と成分表示の透明性に違いが見られます。
たとえば、ニオフには空間消臭用スプレー製品もありますが、その消臭成分は「銅系」といった曖昧な表記ではなく、酸化亜鉛であることが明示されています。
一方、ホリスターのm9では、ストーマパウチ用液滴剤も空間消臭用スプレーも、いずれも消臭成分がクエン酸第二銅二ナトリウムと明示されています。

こうした事例を踏まえると、パナソニックがニオフ消臭潤滑剤の安全性を証明するためには、たとえばブロノポールの使用有無を明確にするなど、成分表示をより正確に記載することが重要ではないでしょうか。

参考文献

1)KAJIMURA Keiji, TAGAMI Takaomi, YAMAMOTO Takeo, IWAGAMI Shozo, ”2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール(ブロノポール)の分解によるホルムアルデヒドの放出”, Journal of Health Science , 54巻, 4号, P488-492(2008)

2)KenU, ”Colonic mucosal pH in human”, https://ikinarilarc.com/wp-content/uploads/2016/09/colonic-mucosal-ph-in-human_article-of-ikinari-larc.pdf(2016)


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