失業手当と再就職手当の損得勘定を損益シミュレーションで明確にする!!

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インターネット検索をすると、再就職手当は「お得」とする記事が多いようです。
本当にそうでしょうか?
今回、シミュレーションで明らかにしました。


以前、私KenUは昨年2022年10月末に定年退職し、公共職業安定所(ハローワーク;俗称「ハロワ」)に通い、求職活動を始めたことを「仕事探しで、金銭面で有利な業種と規模は?平均給与の推移。」という記事の中で書きました。
そして、現在、雇用保険の失業手当を受給しています。

再就職に成功すると、失業手当を受給できなくなりますが、その代わりに ” 就職促進給付 ” を受給できるようになります。
就職促進給付には ” 再就職手当 ”、” 就業促進定着手当 ”、” 常用就職支度手当 ” などがあります。
詳しくはこちら(リンク)⇒ 厚生労働省ホームページ「就職促進給付について」

そこで、それら手当の損益をシミュレーションして検証することを本記事の目的としました。

失業手当と再就職手当

最初のシミュレーションの条件は、KenU同様の次のとおりとしました。
【年齢60歳・定年退職・身体障害者手帳あり】
この場合、給付制限期間なしで360日の失業給付を受けられます。
なお、ハロワで求職申込みをするときに、必ず障害者手帳を提示するようにしましょう。
本人からの申し出が必要で、ハロワ側から障害の有無を問うことはないので、黙っていると短い給付日数を設定されてしまいます。


条件をいろいろ変えても簡単に計算できるように、EXCELで自動計算ワークシートを作りました。
ちょっと見方が難しいかもしれませんが、黄色いセルにだけ手入力すると、他のセルに組み込んだ数式で計算されます。
計算の都合上、最左列の失業の認定日をそのまま再就職日としました。

最右列(失業給付金+再就職手当)は、それぞれの同じ行の(基本手当支給残日数)で就職した場合の、それまでに受給した失業手当(累計失業給付金支給額)と(再就職手当)を合計した金額を示しています。


再就職手当は、支給残日数が所定給付日数の1/3以上ある場合に受給でき、早く就職するほど金額が大きくなります。
でも、下図に示すように、失業給付金との合計を見ると、ゆっくり就職して失業手当を多く受給するほうが金額が大きくなり、お得です。


にもかかわらず、再就職手当が ” お得 ” と主張する人の根拠は、就労した賃金が上乗せされるから、というものです。
それをシミュレーションしたのが次の図表です。
それぞれの支給残日数の期間に、1日8時間、1か月20日労働、賃金時給換算883円(宮城県最低賃金)~1,500円の条件で就職した際の、失業手当の所定給付期間(この場合は360日)に得られる総収入(失業給付金+再就職手当+労働賃金)の違いを示しています。


確かに、最低賃金でも再就職手当がつけば、再就職せずに失業手当を満額受給するよりも総収入は多くなる計算になります。
しかし、それが本当に ” お得 ” と言えるのでしょうか?

上記収入と失業手当満額受給時との金額の差(損益)を示したのが、次の図表です。


低賃金条件で支給残日数が1/3未満のときに再就職した場合、再就職手当も失業給付金も受給できなくなるので、失業給付金を満額受給するよりも総収入は減少してしまいます。
だからといって、再就職手当を受給可能な期間内に、妥協して低賃金の仕事につくのはお得でない気がします。
というのは、給付金は非課税で所得としてカウントされませんが、労働賃金は所得として課税され、また、その所得に応じて健康保険料、市民税・県民税額が変わるので、実質収益が減る可能性もあります。
加えて、再び転職をしなければ、低賃金のまま生活していくことになります。
なので、慌てて低賃金条件で再就職するよりも、腰を据えて会社選びをし、失業手当受給満了までの期間に、資格をとったりTOEICの点数を上げるような努力をしたり、自己研鑽をして、より賃金の高い仕事につくことを目指したほうがよいのではないか?とKenUは考えます。

就業促進定着手当

じつは、上記シミュレーションよりも、もう少し収入を増やせる可能性があります。
それは、再就職手当の支給を受けた人が引き続きその再就職先に6か月以上雇用され、かつ再就職先で6か月の間に支払われた賃金の1日分の額が雇用保険の給付を受ける離職前の賃金の1日分の額(賃金日額)に比べて低下している場合に、就業促進定着手当の給付を受けることが出来ます。
その金額をシミュレーションしたのが次の表です。


再就職手当の支給を受けた人が条件なので、その支給を受けられない人(支給残日数が1/3未満)は対象外になります。
また、年齢ごとの賃金日額上限値、下限値の設定により、離職前賃金日額のままで計算が適用されない場合があります。
手当上限額は次のようになります。
「基本手当日額(就業促進手当日額上限あり)×基本手当の支給残日数に相当する日数(再就職手当の給付を受ける前)× 40%(※再就職手当の給付率が70%の場合は30%)」
上表の場合、全て支給額上限に達しているので、賃金の違いによる差がでないわけです。

失業給付金、再就職手当、労働賃金の合計に就業促進定着手当を上乗せしたときの、失業手当満額受給時の金額との差(損益)を次の図に示します。


再就職先で6か月以上雇用されるかどうかわからない、本人自身耐えられるかどうかわからないなどの不確定要素を含むので、無理して早期再就職を目指すメリットがあるのかどうかについては微妙なことろだと思います。

常用就職支度手当

基本手当の支給残日数が所定給付日数の1/3未満の人が対象の手当があります。
それは、障害のある方など就職が困難な方が安定した職業に就いた場合に、一定の要件に該当すると受給できる、常用就職支度手当というもの。
ただし、再就職手当の支給要件を満たす場合は、再就職手当が支給され、常用就職支度金は受給できません。

支給要件は4つあり、いずれにも該当する必要があります。
要件のうちの一つは、「安定所の紹介により1年以上引き続いて雇用されることが確実であると認められる職業に就いたこと。」というもの。

支給額は (90~45)×40%×基本手当日額(就業促進手当日額上限あり)で、シミュレーションは次の表のとおりです。
なお、他手当のように再就職の賃金に左右されません。


すると、失業手当満額受給時の金額との差(損益)は、次の図のように変わります。


それでもやっぱり、支給残日数が1/3を下回ってしまったら、失業手当を満額もらったタイミングで再就職するのがよい、というのがKenUの結論です。

働き盛り健常者の場合

次に、比較的若い健常者の場合を想定してシミュレーションしてみます。
想定は、次のとおりです。
【大学院卒(24歳で入社)年齢42歳・離職理由リストラ(自己都合でない)・雇用保険加入期間17年・離職前月給35万円】
この場合、給付制限期間なしで240日の失業給付を受けられます。
離職時の賃金日額が350,000円×6か月÷180=11,667円なので、基本手当日額は6,173円になります(※算出方法は割愛します)。

前述と同様にシミュレーションしたワークシートと図を次に示します。


給付残り日数が2/3以上で就職しても1/3以上で就職しても、受給できる手当の合計に大差がありません。

1日8時間、1か月20日労働、時給換算883円(宮城県最低賃金)~2,500円の条件で再就職した際の、失業手当の所定給付期間(この場合は240日)に得られる総収入(失業給付金+再就職手当+労働賃金)の違いを次の図表に示します。


さらに、上記収入と失業手当満額受給時との金額の差(損益)を下図に示します。


給与が離職前と同等もしくは増額するのであれば、支給残日数が1/3未満の時期になったとしても就職したほうが良いでしょう。
もし、給与が大幅に減少するのであれば、支給残日数1/3未満での就職は見合わせ、失業手当受給満了までの期間に、より給与の高い会社を探したり、自己研鑽する努力をしたほうがよいかもしれません。

次の表に就業促進定着手当のシミュレーションを示します。


再就職時の賃金が下がるほど、手当が大きくなります。
上方の図に就業促進定着手当を上乗せした図を次に示します。


就業促進定着手当が加わることで、時給1,500円と時給2,000円の収益の差が縮まりました。
とはいえ、一時の手当につられて、短絡的に再就職を決めるのは損です。
若い人は将来、この先長く仕事をすることにもなり、一時的な損得などあっという間に月収の差で埋まります。
それは、次の表のとおりで、しかも、給与が低い会社は往々にして賞与も低いです。


給与の他にも、やりがいや職場の人間関係が大事というのもありますが、それは入社してから実際に働いてみないとわからないので、まずは賃金を最優先で考えてみてもよいのではないかと、KenUは考えます。


以上、失業保険給付についてシミュレーションしてみました。
なお、考え方は各人各様であり、本記事はKenU自身が就活をしていく上での考えを整理するために書いたものであり、他人への指南、アドバイスではないことを付け加えておきます。


以下、余談です。

今回作成したEXCELワークシートをダウンロードできるようにすることも考えましたが、間違いなどあってもKenUは責任をとれないので控えることにしました。
どうしても当該ワークシートが欲しいという方がいらっしゃいましたら、ワークシートの計算式等の内容に間違いがあってもKenUに一切の責任を問わない旨、また、自己の責任において利用すること、第三者への配布やSNS等のインターネット上に公開しないこと、またワークシートによって得られた計算結果を第三者に公表しないこと、その他KenUの不利益に及ぶ行為をしないことを誓約する旨を記載し本名を明記した上で、メールベースで希望してもらえればと思います。

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