私KenUは、昨年2022年10月末に37年勤めた会社を定年退職しました。
定年後も同じ内容の業務を続ける気になれなかったので、再雇用はお断りしました。
そして現在、求職活動中で失業給付金(失業手当)を受給しています。
「再雇用になったら失業手当がもらえなくて損」と思う方もいるかもしれませんが、じつは同じ会社で働き続けながら、失業手当を回収できるんです。
そのことをシミュレーションしてお示しします。
高年齢雇用継続給付というものがあり、再雇用後の給与が定年時点の給与の75%未満になった場合で次の二つの要件を満たす場合、60歳に到達した月から65歳に達する月まで「高年齢雇用継続基本給付金」(以下、「雇用継続手当」という。)を受給することができます。
1.60歳以上65歳未満の一般被保険者であること。
2.被保険者であった期間(※雇用保険の被保険者として雇用されていた期間の全て)が5年以上あること。
そして、給与の低下率(維持している割合)によって支給額が次のように計算されます。
イ.低下率が61%以下の場合
支給額=(各月の賃金)×15%
ロ.低下率が61%超え75%未満の場合
支給額=-183/280×(各月の賃金)+137.25/280×(60歳定年時点の賃金月額)
(※低下率=(再雇用後賃金月額)÷(定年前賃金月額)×100 )
低下率と支給割合の関係は次の表のようになります。
なお、賃金月額は、47万8500円の上限が設定されています。
なので、たとえ定年時点の給与が月60万円だったとしても、低下率も支給額も47万8500円を基準として計算されます。
例えば、60万円の給与をもらっていた人が42万円しかもらえなくなった場合は、低下率は、42/60=70%と計算されるのではなく、42/47.85=87.7%となり、給付対象ではなくなります。
なので、47万8500円以上の給与をもらっていた人は、47.85×0.75=35万8875円未満に給与が低下しないと、雇用継続手当を受給できません。
賃金月額が47万8500円以下だった人、例えば、40万円の給与をもらっていた人が29万円しかもらえなくなった場合、低下率は29/40=72.5%と計算され、75%未満なので雇用継続手当の給付対象になります。
定年時の給与月額が47.85万円以上~25万円だった人の、再雇用時の給与の低下率と支給額の関係をシミュレーションすると、次の図のとおりになります。






定年前に比べて給与が61%に減少したとしても、75%に減少した場合と大きく違わない収入が得られることがわかります。
しかも、雇用継続手当は非課税で所得としてカウントされないので、給与が75%までしか減らなかった人よりも、所得税、健康保険料、市民税・県民税などの面で有利になる可能性があります。
ちなみに、独立行政法人労働政策研究・研修機構による2019年の調査『調査シリーズNo.199, 60代の雇用・生活調査』によると、55 歳当時雇用者で 60 歳定年経験者のうち定年後再雇用等で雇用継続された60~64歳の男女の賃金減少率(減った額の割合)は、41%~50%が最多となっています。
低下率に言い換えると、59~50%が最多ということです。
また、男性よりも女性のほうが再雇用後の給与減少率は低くなるようです。
もしかしたら再雇用後に男女格差が是正されるということなのかもしれません。
次に、定年時点及び再雇用後の給与と支給額の関係を示します。
例えば、再雇用後の賃金が15万円の場合、定年時点の給与がいくらであろうが支給額は同じです。
さらに、65歳になるまで働いた場合の総支給額を次に示しました。
単純に、総支給額=支給額×12か月×5年 で計算しています。
再雇用で賃金がかなり減っても、長く勤めれば多くの手当を受給できることがわかります。
じゃあ、もし、再雇用を希望しないで60歳で定年退職して失業手当を満額受給したらいくらになるのでしょうか?
定年時点での月収ごとの失業手当の最大受給可能総額は次の表のとおりです。
KenUは障害者なので360日受給可能ですが、健常者の方は、150日給付になるので障害者の5/12(約42%)の総額になります。
上表の失業手当に対する、雇用継続手当による回収率を計算したのが、次の図です。
健常者の方の場合、退職して失業手当を受給するよりも、給与が6割程度まで減ったとしても再雇用で雇用継続手当を受給するほうが圧倒的にお得だということがわかります。
失業手当の2倍以上ものお手当を回収できるんですから。
以上、高年齢雇用継続基本給付金のシミュレーションをしました。
給付内容の詳細については、厚生労働省のホームページの「雇用継続給付について」(←リンク)、「Q&A~高年齢雇用継続給付~」(←リンク)などで、ご確認ください。
以下、余談です。
前回は「失業手当と再就職手当の損得勘定を損益シミュレーションで明確にする!!」という記事を書いたので、その勢いで関連して今回の記事を書くことにしました。
そんな中、定期購読で郵送されてくる『PRESIDENT』の3/10発売号が「定年の新常識・9割は、準備不足で後悔!年代別『やればよかったこと』リスト」というタイトルでした。
失業手当を受給するには、求職活動実績が求められます。
原則として、失業の認定日~次の認定日前日までの期間に最低2回行うことが必要です。
でも、障害者等の就職が困難な方(申し出が必要)は、1回あれば認定されます。
KenUの場合は、ハローワークでの職業相談のほか、合同面接会に参加したり、就職支援セミナーを受講したり、なんだかんだ2回の実績を作ってますね。
履歴書と職務経歴書の書き方に関するセミナーはとても参考になったので、求職中の方にはおすすめです。
ちょっと小言ですが、厚生労働省のホームページやハロワのしおりの求職活動に関する説明で、「最低2回以上」って書かれてるんですけど、最低と以上は併用しないので誤りです。
書くなら「最低2回」か「2回以上」。
なんか意外なのが、同じ厚労省でも医薬品関係ではそういうところ明確に指導されるんですけどね。