高額療養費制度はどう変わる?年間限度額の設定で長期治療患者の負担増加は回避

投稿日:

自民党・石破政権下の令和7年(2025年)初頭(1月23日)に、厚生労働省保険局から発出された『高額療養費制度の見直しについて』は、多くの患者団体を中心に、国民からも強い反発を受けました。

その後、制度内容が継続して再検討され、高市政権に移行後の年末(12月25日)に、内容を大きく修正した『高額療養費制度の見直しについて』が示されました。

そこで本記事では、

 ・現行制度
 ・2025年初頭の見直し案(以下「一次案」)
 ・2025年末の見直し案(以下「二次案」)

の違いについて、筆者が独自にグラフ化し、比較しました。

なお、見直しは段階的に実施されますが、本記事では最終段階である令和9年(2027年)8月以降の内容に限定しました。

月間上限(初月~3か月・単月)


一次案、二次案のいずれにおいても、所得区分の細分化が行われています。
これは、所得水準に応じてよりきめ細かく自己負担額を設定しようとする意図によるものです。

二次案では、一次案よりも自己負担額は全体的に引き下げられました。
ただし、現行制度と比較すると、結果としてすべての所得区分で負担増となっています。

なお、今回作成したグラフは、定額部分のみを示しており、「(医療費 − 規定額)×1% 」という加算部分を含んでいないことに留意してください。

また、所得区分は年収ではなく標準報酬月額で示しています。
なぜなら、政府資料が示す「年収」は、賞与や残業手当などの変動要素が含まれ、想定される区分から外れてしまう人が出てくるためです。
該当する高額療養費の区分を確認するうえでは、標準報酬月額を基準にするのが基本といえます。

年間上限(初月~12か月・累計)


高額な医療が治療初月から1年間継続した場合、4か月目以降は「多数回該当」が適用されます。
二次案では、新たに「年間上限」が設定されたことから、結果的に初月から3か月までの多数回該当ではない高額療養費の自己負担分も含めて調整が行われます。
そのため、すべての所得区分において、現行制度よりも自己負担が軽減されます。

多数回該当時の年間上限


二次案では、多数回該当が継続するケースにおいても「年間上限」が適用になり、標準報酬月額が15万円以下の人は現行制度よりも自己負担が軽減され、その他の所得区分では現行制度と変わらない自己負担になります。

ここまでの譲歩で医療財政は持続可能なのか

二次案は、一次案と比べるとかなり踏み込んだ修正が加えられており、患者団体の要望に譲歩した見直し案になっていると思います。
とくに、長期療養が必要になるケースでは、大きく改善されたと感じます。

一方、ここまで負担増を抑えたことにより、「医療財政の逼迫を緩和できるのか?」「将来世代の社会保険料の軽減はできるのか?」という疑問は残ります。

高齢化が進む中で医療費全体が増加し続ける構造は変わっておらず、将来的には再び同様の議論が浮上し、負担増を伴う見直しが求められるかもしれません。
今回の再見直し案は一つの落としどころではありますが、高額療養費制度を巡る議論は、今後も続いていくことになるでしょう。


IKINARI LARCをもっと見る

購読すると最新の投稿がメールで送信されます。

コメントを残す