基礎年金“底上げ”で、障害厚生年金3級が実質減額に?!

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はじめに

先日、日本年金機構から、障害厚生年金の年金額改定通知書が届きました。


そこで、改めて思ったんです。

2階建て年金制度(1階:国民年金(基礎年金)、2階:厚生年金)のうち、障害等級3級が受給できるのは、2階部分(厚生年金の報酬比例部分)のみです。

なので、先般、政府(厚労省)が発表した「厚生年金の積立金を活用して国民年金の給付水準を3割程度引き上げる案(通称:基礎年金底上げ案)」(以下「制度改定案」)が実施された場合、3級の障害厚生年金は事実上減額か?ということ。

では、いくら減額になるのか?

シミュレーション条件

制度改定案は国会で可決しましたが、実施は4年後(2029年)の財政検証を経てから判断されるとのこと。
しかし、本シミュレーションでは、厚生年金のマクロ経済スライド調整期間が2036年度まで延長になる当初の制度改定案に基づいて行います。

シミュレーションの条件は次のとおりとし、現行制度と制度改定案との差を、年金の最低保証額(※)をベースにして比較してみます。

※最低保証額とは、3級の障害厚生年金において、標準報酬月額(報酬比例)にかかわらず支給される最低限の年金額のことです。受給額が一定基準を下回る場合に適用されます。

  • 50歳で2025年から障害厚生年金(障害等級3級)を受給開始
  • 2040年、65歳まで障害厚生年金を受給(以後は老齢厚生年金+老齢基礎年金に切換え)
  • 2025年時点の年金額(年額):623,800円(最低保証額)
  • マクロ経済スライドの終了年: 2025年度(現行制度)、2036年度(制度改定案)
  • 物価・賃金の上昇率:2%(毎年)
  • 年金改定率:物価・賃金上昇率(2%)-マクロ経済スライド調整率(0.6%)= 1.4%
  • 受給シミュレーション期間:2025年度~2040年度(15年間:50歳~65歳)

グラフ(1)年金額の推移(実額)

各年における障害厚生年金(3級の最低保証額)の推移を次のグラフに示します。
また、現行制度と制度改定案との累積の受給額差も示します。


2025年度の支給額は623,800円。
年金額は、物価や賃金の上昇率(以下「上昇率」)に応じて毎年改定され、現行制度、制度改定案ともに、受給額は年々上昇します。

ただし、制度改定案では、2036年までのマクロ経済スライド調整により、金額の伸びは現行制度よりも緩やかになります。
そして、受給期間15年間の累計では、約48万円もの減額になります。
月額平均にすると、約2,700円に相当します。

なお、高い標準報酬月額で支給額が大きくなるほど、減額の幅は大きくなります。

グラフ(2)相対的年金額の推移(実質価値)

物価が上昇すれば、同じ金額でも実質的な価値は下がります。
そこで、2025年を基準(100%)として、物価上昇分を考慮して換算した、相対的な年金額の推移を次のグラフに示します。


現行制度では、マクロ経済スライド調整が終了しているので、実質価値は一定です。
それに対して、制度改定案では、2036年まで実質価値は低下し続けます。
そして、2036年時点の受給額の実質価値は約94%になります。
金額的には、年額で約3万9千円の差です。

まとめ

以上、私なりの理解に基づいてシミュレーションした結果を紹介しました。

制度改定案は、就職氷河期世代(※3参照)や現役世代の将来の年金水準を意識した設計なのかもしれませんが、3級の障害厚生年金の場合、救済すべき世代にまで影響が及び、受給額が減少します。
最低保証額をベースにした場合、月額換算では数千円の減少にとどまりますが、本当にそれでよいのでしょうか?
やや、疑問に感じました。

ちなみに、私の場合、障害厚生年金の受給はあと数年で終了します。
というのは、65歳到達時に、より受給額が増える老齢基礎年金+老齢厚生年金に切り換えます。

余談

ここで、少しマクロ経済スライドについて説明します。

政府の公式発表では、「令和7年度の年金額は、法律の規定に基づき、令和6年度から1.9%の引上げとなります。」となっています。
※出典:厚労省プレスリリース(令和7年1月24日)、報道関係者 各位『令和7年度の年金額改定についてお知らせします』より

私の年金額改定通知書の金額で計算すると、1.921%の増加です。
昭和31年4月2日以後生まれの方の3級の最低保証額(日本年金機構HP記載)で計算すると、(623,800円-612,000円) ÷ 612,000円=1.928%の増加です。

年金改定率は、
( 名目手取り賃金変動率または物価変動率の低い方)−マクロ経済スライド調整率
で計算されます。

令和7年度の参考指標
・ 物価変動率:2.7%
・ 名目手取り賃金変動率:2.3%
・ マクロ経済スライドによるスライド調整率:▲0.4%(※公的年金被保険者総数の変動率 ▲0.1%、平均余命の伸び率 ▲0.3% )

なので、2.3% – 0.4% = 1.9% ということになります。

少子高齢化により被保険者数が減少し、高寿命化により平均余命が伸びると、スライド調整率のマイナス幅が大きくなります。
また、インフレ率が高くても賃金上昇が抑えられると、年金改定率は物価上昇を下回り、結果として低くなります。
今回のシミュレーションにおいて、2040年までの平均年金改定率は、少子高齢化の進行、マクロ経済スライドの継続、高インフレ、低賃金上昇を想定しました。


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