先日、妻がクリスマスケーキの新聞折込みチラシをじっと見つめながら、ぽつりとつぶやきました。
「これって、猫にあげても大丈夫なのかな?」
目をとめたのは、某大手・洋菓子販売チェーン店が売り出している ” 犬・猫用ケーキ (ペットケーキ)” という商品。
そこで今回、この商品について文献をもとに考察し、にゃんちゃんたちにはあげないほうがよい、と判断しました。
まず、参考にした文献は次のとおりです。
- 環境省自然環境局総務課動物愛護管理室 発行パンフレット「飼い主のためのペットフード・ガイドライン ~犬・猫の健康を守るために~」
- 阿部又伸、イヌ・ネコの基礎栄養(2)食性、嗜好、食餌の摂取量など、ペット栄養学会誌、2(2) : 70-77、1999
- 大島誠之助、イヌとネコの食性・採食パターン・嗜好・摂取量および飲水量、ペット栄養学会紙、26(2) : 87-99、2023
- ASPCA(アメリカ動物虐待防止協会)News ” Sharing is Caring: Foods You Can Safely Share with Your Pet “、” Toxic and Non-Toxic Plant List – Cats ” 、他
そして、メーカーによれば、犬・猫用ケーキの構成は次のとおりになっています。
- 米粉スポンジ
- ストロベリークリーム
- 練乳風味のムース
- 練乳風味のクリーム
- 糖付け苺
- フリーズドライ苺
- クッキー
- メレンゲ
注目は、クリームと炭水化物が主な構成成分であるということ。
そして、” 犬は雑食 ” 、” 猫は肉食 ” というように、必要な栄養素に違いがあります。
にもかかわらず、犬・猫用としていることに、違和感を生じました。
以下、いくつかの疑問点について調べて考察しました。
クリームの乳成分
使われているのは、生クリームなのか?ホイップクリームなのか?どちらでしょうか?
生クリームの乳成分については、イヌもネコも牛乳を好み、良質のたんぱく質、エネルギー、カルシウム(Ca)の供給源です。
ただし、牛乳に含まれる乳糖をうまく消化吸収することができないので、下痢を起こすことがあります。
また、Caの過剰給与はイヌにおいては危険とされています。
ホイップクリームは、乳成分由来動物性脂肪の他に植物性脂肪を含みます。
猫は動物性脂肪を好みますが、中鎖脂肪酸の多い植物油は嫌い、特にC8脂肪酸(カプリル酸)に対する拒絶反応が強くなります。
なので、ケーキにホイップクリームが使用されているのであれば、猫用としては適当ではないと考えられます。
糖付け苺、フリーズドライ苺、ストロベリークリームの甘味
イヌは甘味が大好きなのに対して、ネコは糖の甘味を感じません。
イヌはショ糖に反応する味蕾の数が最も多いのに対して、ネコはショ糖の味を甘受する味蕾が欠如しています。
また、猫は苺の甘味成分である果糖(フルクトース)を代謝する酵素も持っていません。
猫に対するいちごの安全性
ASPCA(アメリカ動物虐待防止協会)によれば、ペットに安全なフルーツのリストに苺が含まれており、ストロベリーは犬・猫・馬に無毒とされています。
ただし、苺は繊維質や糖分を多く含むことから食べ過ぎた場合に消化不良を起こす可能性があること、一部の猫は苺に対してアレルギー反応を起こす可能性があること、などが知られています。
炭水化物(米粉スポンジ、クッキー)の消化に関して
イヌやネコの唾液にはでんぷん分解酵素(α-アミラーゼ)を含みません。また、ネコの膵液中のα-アミラーゼ活性はイヌの1/20に過ぎないので、本質的にネコはでんぷんの消化に適さないことが示唆されています。
ただし、小腸粘膜に存在する二糖類分解酵素(マルターゼ)の活性が高いことから、高温高圧化でα化されたでんぷんの消化はネコでも良好であるとされています。
ケーキスポンジの米粉でんぷんは焼成時に部分的にα化されます。
完全にα化されていない場合、猫が消化するのは難しい可能性があります。
メレンゲの卵白
使われているメレンゲは、生なのか?焼成なのか?どちらでしょうか?
メレンゲは卵白を使って作られます。
犬や猫に生の卵白を与えると、卵白に含まれるアビジンという成分がビオチン(ビタミンB7)の吸収を妨げます。
長期間にわたって生卵白を与え続けると、ビオチン欠乏症が引き起こされ、皮膚炎や成長不良などの症状が現れる可能性があります。
加熱焼成されたメレンゲであれば、アビジンが変性しビオチンの吸収を妨げる影響がなくなるため、犬や猫に与えても問題はありません 。
シュウ酸カルシウム結石の心配
いちごにはシュウ酸、クリームにはカルシウム(Ca)が含まれます。
シュウ酸カルシウム結石のリスクが高い猫には、シュウ酸を多く含む食品を避けることが推奨されます。
結論
以上により、栄養学的視点や健康に及ぼす影響リスクの観点から、猫ちゃんに犬・猫用ケーキを与える意義や必要性はないと判断しました。
また、食性、嗜好、味覚の観点から、わんちゃんは食べるかもしれませんが、にゃんちゃんは食べないのでは?と思います。
なお、本記事はKenU個人の考察と判断であり、犬・猫用ケーキを与えてはいけない、ということを結論づけるものではないことにご注意ください。
以下、余談です。
ネットで、猫ちゃんに生肉を与えてる動画を見たことがあります。
環境省のガイドラインのパンフレットでは、注意が必要なものに生肉があがっており、有害な寄生虫や細菌が存在する可能性があるので、加熱調理をして予防することを呼びかけています。
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