47都道府県庁所在地の自治体のストーマ装具給付対象者と基準額

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はじめに

日常生活用具給付等事業に関する法令等の説明については、以前の記事『ストーマケアアクセサリー(付属品)も給付対象になる法律がある』に記載しているので割愛します。

まず、給付には所得制限があります。
障害者のいる世帯の市民税所得割額が、46万円以上の人は対象外です。

特別徴収税額(住民税)ではありません。
住民税は、市民税と県民税からなり、その割合は6:4。
市民税は、所得割額と均等割額からなります。
県民税は、所得割額と均等割額からなります。

なので、給付対象外になる人というのは、日本人の平均所得に比べて、かなり所得の高い人ということが分かります。
ざっくりした目安でいうと、特別徴収税額を76万円くらい納めている人。
推定給与収入(年収)でいうと1,200万円以上かな?(※総所得と控除額で変わります。)

ストーマ装具は、日常生活用具のうちの排泄管理支援用具に位置付けられ、原則として永久人工肛門を造設して障害者手帳を取得していることが給付要件です。

給付の際には、基準額に対して原則1割の自己負担が必要です。
基準額がそのまま給付されるわけではありません。

例えば、1か月あたりの基準額が8,600円で6か月分が給付される場合、

基準額8,600円 × 6か月 = 51,600円のうち、
公費負担額 は、51,600円 × 0.9 = 46,440円
自己負担額 は、51,600 × 0.1 = 5,160円 + 超過した購入代金

となります。

なお今回調査した以外の一部の自治体では、自己負担が不要なところもあるようです。

調査対象および方法

全国の都道府県庁所在地の自治体を調査対象としました。
自治体ごとに給付額が定められるため、同一県内であっても居住地の違いで基準額が異なる場合があることにご注意ください。

調査方法は、各自治体のホームページを参照しました。
多くの自治体では「〇〇市障害者日常生活用具給付等事業実施要綱」が公開され、種目、対象者、基準額などが記載された一覧表を閲覧することができます。
しかし、ホームページから情報を見つけられない自治体もありました。
その場合、問合せフォームまたはメールにより直接問い合わせて回答を得ました。

調査結果

以下に、地方ごとの調査結果一覧表(2023年10月現在)を示します。

なお、表中の対象者、種目(品目と記載している自治体あり)の記載については、なるべくオリジナルのとおりとしましたが、内容を変えずに文字数を減らす編集をしている場合があります。
基準額については、1か月分の金額を示しました。

北海道地方・東北地方

表をクリックすると別タブで拡大表示できます。

関東地方

表をクリックすると別タブで拡大表示できます。

【備考】
新宿区では、「令和5年4月からの変更点として、ストマ装具(消化器系、尿路系)の基準額が各月額13,000円まで支給できるようになりました。」とのこと

中部地方

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【備考】
岐阜市と名古屋市では2か月の基準額が示されていましたが、表中では1か月分に換算しています。
新潟市の対象者は、「障がい児」となっていますが、「障がい者(児)」の間違いではないかと思います。
静岡市の対象者は、「児童であって」とありますが、「者および児童であって」の間違いではないかと思います。
金沢市では、消化器系は従前の8,900円から増額、尿路系は従前の11,700円から増額になっています。

近畿地方

表をクリックすると別タブで拡大表示できます。

中国地方・四国地方

表をクリックすると別タブで拡大表示できます。

九州地方・沖縄地方

表をクリックすると別タブで拡大表示できます。

【備考】
宮崎市では4か月の基準額が示されていましたが、表中では1か月分に換算しています。

考察

給付の基準額について

消化器系では、一番高いのは13,000円(新宿区、名古屋市)、一番低いのは8,600円(多数の自治体)で、その差は4,400円。
1割の自己負担を除いた公費負担額では、3,960円の差。

尿路系では、一番高いのは13,000円(新宿区、横浜市、名古屋市)、一番低いのは11,800円(多数の自治体)で、その差は1,200円。
1割の自己負担を除いた公費負担額では、1,080円の差。

消化器系の自治体間の差は、尿路系よりも大きいです。
ほとんどの自治体で、尿路系よりも消化器系の給付額は低いですが、新宿区と名古屋市では尿路系と消化器系の給付額は同じです。

なお、生活していく上で自治体に支払う税金が異なるので、どこの自治体に住んだらストーマ装具代の負担が大きくなるとか小さくなるとか、そこまでは分からないので注意が必要です。

給付対象者について

詳細に記載している自治体と大雑把な記載しかしていない自治体があります。
「障害者手帳をお持ちの方」「一時的造設を除く」と明確に記載している自治体がある一方、障害者手帳がない一時ストーマでも対象になるの?と勘違いしそうな記載をしている自治体もあります。
一時ストーマで受けられる制度があるかかどうかについては、各自治体に直接問い合わせるとよいでしょう。

種目について

「ストーマ装具」「ストマ装具」「ストーマ用装具」「ストマ用装具」など、記載の仕方に自治体間での統一がありません。
その中で注目したいのは、「畜便袋」ではなく「消化器系」、「畜尿袋」ではなく「尿路系」という名称を使用している自治体です。
ストーマを造設した人への気配りが感じられます。そう感じるのは、次の理由から。

SNS上で多く目にしたことがあるのが、「畜便袋と言わないでほしい」というもの。
多くの人は、ストーマを造設しなければ生きられないという理由で、かなり受け入れ難い極めて心痛む決断をやむなくしているわけで、手術後に人としての自尊心が低下している中で、「糞(くそ)を蓄える袋」を意味する屈辱的用語を突き付けられることは、人によっては自尊心の低下に拍車をかけられるようなものかもしれません。

余談ですが、一部の間で面白がって使われている、「有袋類」といった獣扱いの言葉でストーマ保有者を揶揄するのもやめてほしいと、KenUは思っています。
おそらく、人工肛門に関する講演会の古いYouTube動画で、某看護師が「有袋類ではないですが・・・」などと冗談めかして発言していたのが始まりではないか?と推測しています。

終わりに

今回、調査した目的は、ただ全国の給付額が知りたかったから。
給付金額が自治体ごとに異なるのは、仕方がないと思う反面、ストーマ装具の値段は全国同じであることを考えると釈然としない面もあります。

ちなみに、最近のKenUの6か月間のおおよそミニマムのストーマ用品使用量は下表のとおりで、総額約8万3千円です。
給付額では全然足りません。
装具代金も値上がりしてますし、給付額も値上げしないのかなぁ?

上表の計算上の前提は次のとおりです。

  • 2023年10月1日~2024年3月31日の182日(26週)で、装具交換頻度は週2回
  • 装具交換時に皮膚保護シール1枚を16分割して使用
  • 消臭潤滑剤は、1回5mL、1日あたり平均1.5回便を排出(※在職中は、1日2~3回でした)

表に示していないストーマ用品もいろいろ購入しているので、実際の負担額はもっと大きいです。

ところで、種目などの一般用語や対象者の書き方くらい全国で統一できないのかなぁ?とも思います。
以前にも、『47都道府県別・珪藻土バスマットのごみの区分、捨て方一覧』、『ストーマケアアクセサリー(付属品)も給付対象になる法律がある』、『正しいストーマ装具の捨て方・分類は在宅医療廃棄物の可燃ごみ、出し方は自治体ごとにばらばら』、『47都道府県中オストメイトに優しいのは?1道、1都、1府、11県です。』などの記事を書いていますが、どれも自治体間での用語の統一感がないんですよね。

それから、情報が探しやすくなっているホームページ、情報を探すのに苦労する・情報が載ってないホームページなど、自治体によって差があるのもいつも気になります。

関連資料

2008/1/31現在の情報であれば、日本オストミー協会の市町村ストーマ装具給付実態調査結果の集計表(←参照リンク・PDFファイル)が公開されています。
興味のある方はダウンロードしてみてください。

また、三菱UFJリサーチ&コンサルティングが行った『日常生活用具給付等事業の実態把握報告書(令和3(2021)年 3 月)』(←参照リンク・PDFファイル)といった資料もあります。

2件のコメント 追加

  1. 玉弥ンのママ より:

     はじめまして 夫の直腸がんが判明したのは3年前、悩みに悩んで人工肛門に。その年は18年共にした茶トラの「タマヤン君」が虹の橋を渡り、実母の脳梗塞で右半身付随状態になり、怒涛のように押し寄せてくる出来事をさばきまくって3年が経過。この間内視鏡検査でポリープが見つかり切除も経験。癌の転移は無く順調(日々の不安と面倒臭さと闘いながら)に。ところが一昨日、便秘に伴う腹痛を訴え術を行った病院へ。休院日の当番医は外科医♂(主治医ではない)というので少し安心して。ところがレントゲンのみで、水分を取るよう促されて炭酸マグネシウムの錠剤を処方され、(こんなに痛がっているのにと補足を訴えればよかった。後の祭り。妻失格。役立たず。自分を責める。)帰宅。昼、夕食を重湯にしたが二口三口。夜中2回嘔吐したというので再び救急外来に朝一で行くが、1時間以上待たされてようやく診療。内科医の女医さんがテキパキと説明、鼻にチューブ、血液検査、CT検査、で腸閉塞と判明。即入院、期間は2週間。覚悟はしていたが。
     以前からけんゆーさんのブログを参考に人工肛門増設に踏み切った事もあり、また以前イレウスのブログ(奥様の件)を思い出し懸命に探しましたが見当たらない(一昨日)、焦りました、、、。が、今朝一人落ち着いて検索したところ探せました。再び読み直しました。
     先ほど本人から便が出たとTELがあり、一安心です。いつも疑問に思った時はけんゆーさんのブログを見て参考にさせて頂いてます。オストメイトの集いにも最初の頃は行ってましたが「人それぞれだから」「個人差があるから」と自分の体験談を語らない古株ばかりで最近は参加もしてません。また、装具の購入に関しましても取引業者の軋轢があったりと、地元ではないネットで探した代理店での購入にこの10月から変えました。頼りになる代理店(北関東から南東北)があれば教えて欲しいです。
     長々となりましたが、いつもいつも参考にさせていただいておりました。勇気を持って感謝のコメントを残すことにしました。
     

    1. KenU より:

      ブログを読んでくださってありがとうございます。
      これからも有益な情報を発信できればと思います。

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