メルセデス・ベンツ純正ウインドスクリーン ウォッシャー液と日本国内のカー用品店などで販売されているウォッシャー液は何が違うのか?
明らかに示してみました。
私KenUのMercedes-Benz GLA 220 4MATICは、新車から4年目の法定1年点検が3月の予定のため、メルセデス・ベンツ仙台泉にサービス入庫予約をしました。
点検見積りで、” 002986147109 ウインドシールド ワツシヤー FL ” の値段(1,650円)が気になりました。
国産品の-35℃対応2Lウインドーウォッシャー液なら、スーパーとかカー用品店で300~400円ですから。
でも、注意が必要なのは安価国産品と高価メルセデス純正品との成分の違い。
やたらなウォッシャー液を使用して不具合を起こすことは避けたいので、調べてみました。
SDS(安全データシート:safety data sheet)に成分が記載されています。
メルセデス・ベンツ純正品 A 002 986 14 71 09 WinterFit Windscreen washer concentrate(以下「ウインターフィット」という。)は、エタノール(EtOH:エチルアルコール)、2-プロパノール(IPA:イソプロピルアルコール)、ブタノン(MEK:メチルエチルケトン)からなります。
Substance name | Concentration % | CAS No. |
ethanol | 50~100 | 64-17-5 |
propan-2-ol | 5~10 | 67-63-0 |
butanone | 1~2.5 | 78-93-3 |
国産品(古河薬品工業株式会社)のKYKオールシーズンウォッシャー液(原液凍結温度-35℃)の成分は、水(精製水)、メタノール(MeOH:メチルアルコール)、界面活性剤(せっけん成分)、さび止め、着色料からなります。
成分名 | 含有量 wt% | CAS No. |
水 | 64~66 | 7732-18-5 |
メタノール | 34~36 | 67-56-1 |
陰イオン系界面活性剤 | 1未満 | 非公開 |
防錆剤 | 1未満 | 非公開 |
色素 | 微量 | 非公開 |
ウインターフィットと国産品とで大きく異なるのはアルコール成分。
つまり、エタノールとメタノールの違いがあります。
エタノール(沸点78℃)は、メタノール(沸点が65.4℃)よりも揮発性が低いです。
凝固点はエタノールが-114.1℃でメタノールが-98℃ですが、水溶液濃度により変化します。
各アルコールの種々濃度の水溶液の凝固点は次の図のとおりです。
個人的な見解としては、メルセデス純正品以外のウォッシャー液を混ぜて使わないほうがよいのではないかと思います。
その理由は次の3つ。
1.国産品は、ミネラル(イオン)が除去された精製水や超純水が使用されている他、界面活性剤の種類や配合量で導電性も変わって、レベルセンサーの動作に影響する可能性が考えられる。
2.国産ウォッシャー液は液性が弱アルカリ性であり、ウインドーウォッシャー液とヘッドランプウォッシャー液を兼用している車種では、ヘッドライトカバーのコーティングを痛めて劣化(黄ばみ・くすみ・曇り)を早めることが考えられる。
3.非純正品のウォッシャー液の使用が原因で、ウォッシャーフルイドが固まってパイプ/ポンプを詰まらせることがあり、ウォッシャー液が噴射されなくなるトラブルが起こることが、メルセデス関連フォーラムで述べられている。
ウインターフィットは水道水で希釈して使用するように指定されています(蛇口Tap Waterのピクトグラムで明示)。
水道水はミネラルやイオンを含み導電性があります。
ウォッシャー液量が1Lを下回るとセンサーが検知して、車両のメーターパネル中央のディスプレイに警告メッセージが表示されます。

GLAの取扱説明書(英語版)には、次のように記載されています。
・Do not use distilled or de-ionized water. Otherwise, the fill level sensor may be triggered errone ously.
・蒸留水や脱イオン水は使用しないでください。 そうしないと、充填レベルセンサーが誤って作動する可能性があります。
社外品のウォッシャー液を使用したために警告ランプが消えない、または液量の減少を検知しないなどの誤検知は避けたいですね。
海外のメルセデス・ベンツ フォーラムでは、社外品のウォッシャー液を入れてセンサー誤作動したときに、食塩を入れたら正常になったという情報があります。
しかし、予期せぬ部分が錆る恐れがあるので、真似しないほうがよいでしょう。
ここで少し、エタノールの酒税・アルコール税について説明します。
日本国内の場合、飲食用に転用できないようにあらかじめIPAを混合した原料(工業用・変性アルコール)を使用した場合、酒税がかかりません(※出典:経済産業省ホームページ・アルコール事業より)。
ドイツ国内も同様で、変性したアルコールは課税されません(※出典:Alkoholsteuergesetz / § 27 Steuerbefreiungen(ドイツ, アルコール税法/§27免税))。
また、輸入しようとする製品(エタノールを含有する製品)が酒税法上の酒類に該当する場合には酒税が課されますが、食用に適さない添加物を使用するなどの飲用に供することができないものは酒税法上の酒類に該当せず、酒税は課されません(※出典:税関ホームページより)。
なので、ウィンターフィットに酒税はかかっていません。
一部のサイトにみる、「ウインターフィットは酒税がかかっているから値段が高い」といった旨の記載は、誤りです。
ちなみに、薬局で販売されている、IPAが添加された「消毒用エタノールIPA」は、酒税がかかっていないので、未変性のエタノールを使用した消毒用エタノールよりも安価です。
健栄製薬 消毒用エタノールIPA 500ml (詰め替え用) ×2本セット (指定医薬部外品)
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【補足】メルセデス・ベンツの古い車種では、フロートのウォッシャー液レベルセンサーが採用されています。

たとえばCクラスの場合、ウォッシャー液レベルセンサーは、W203(部品100)とW204(部品170)とで異なることが、下図から分かります。
フロートセンサーであればウォッシャー液の電気的特性は関係ありません。
そのため、2007年 C Class(W203)のユーザーズマニュアル(英語版)には、次のとおり、市販のプレミックスされたウインドシールドウォッシャー溶剤/不凍液を使用できることが記載されています。
” Refill the reservoir with MB Windshield Washer Concentrate “MB SummerFit” and water (or concentrate and commercially available premixed windshield washer solvent/antifreeze, depending on ambient temperatures). ”
ただし、次のようにも記載されています。
” Only use washer fluid which is suitable for plastic lenses. Improper washer fluid can damage the plastic lenses of the headlamps. ”
使用可能なウインドーウォッシャー液については、それぞれの車種のマニュアルを確認してください。
夏用のA 000 986 20 00 09 SummerFit Windscreen washer concentrateの成分も調べてみました。
sec-アルカン(C=14~17)スルホン酸のナトリウム塩、α-スルホ-ω-ヒドロキシポリ(オキシエチレン)のアルキル(C=12~14)エーテルのナトリウム塩、(カプリリル/カプリル)グルコシドの混合物。
つまり、洗浄泡立ち成分(界面活性剤)の水溶液です。
Substance name | Concentration Wt% | CAS No. |
Sulfonsauren, C14-C17-sec-Alkan-, Natriumsalze | 10~25 | 97489-15-1 |
alcohols, C12-14, ethoxylated, sulphate sodium salt | 5~10 | 68891-38-3 |
D-glucopyranose, oligomers, decyl octyl glycosides | 1~2.5 | 68515-73-1 |
【後日談】結局、4年目の1年点検のとき(3/24)にウインターフィットを補充してもらうことにしました。
余った700mLをボトルごともらってきました。
以下、余談です。
ウインド ウォッシャーというとWIND(風)Washer(洗浄するもの)となるので間違いで、ウインドウ(window:窓) ウォッシャーというのが正解。
海外では、車のフロントガラスのことをウインドシールド(Windsield)とかウインドスクリーン(Windscreen)といいます。
Wind(風)、Sield(防御)、Screen(ついたて・遮蔽)の組合わせですね。
メルセデス・ベンツのウィンドウ ウォッシャー液は何リッター入るか知ってますか?
車種によって異なります。
例えば、2007年 C Class(W203)と E Class(W211)のユーザーズマニュアル(英語版)には、ウォッシャー液容量について次の記載があります。
【C Class】
The washer fluid reservoir has a capacity of approx.:
・3.2 US qt (3.0 l) in vehicles without headlamp cleaning system*
・6.4 US qt (6.0 l) in vehicles with headlamp cleaning system*
【E Class】
The windshield washer reservoir has a capacity of approximately:
・6.9 US qt (6.5 l) in vehicles with a headlamp cleaning system*
・4.8 US qt (4.5 l) in vehicles without a headlamp cleaning system*
つまり、
ヘッドランプクリーニングシステム非装着車の場合、Cクラスは3.0リッター、Eクラスは4.5リッター。
ヘッドランプクリーニングシステム装着車の場合、Cクラスは6 .0リッター、Eクラスは6.5リッター。