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中井美穂さんの人工肛門告白に関する記事がネットやツイッターに上がるたびに、このブログのストーマカテゴリーの記事のアクセス数が一時的に跳ね上がります。
多いときで、1日に6,000 PVを超えたこともありました。
「人工肛門」という言葉に何か惹かれるものがあるのでしょうか?
想像できないから検索しただけなのでしょうか?
それで、「Stoma(ストーマ、ストマ)のことを『人工肛門』と言うけれど、その呼び方にKenUは疑問を感じている」ということを記事にしたいと思います。
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まず、「ストーマ」の語源 (etymology) を調べてみました。
「ギリシャ語で”口”の意味」と説明しているところがあります。
出典1:ブーケ若い女性オストメイトの会、ストーマ用語集(←参照リンク)
出典2:ONLINE ETYMOLOGY DICTIONARY[オンライン語源辞書](←参照リンク)
一方、
「ラテン語で”乳頭状に突き出した口”の意味」と説明しているところもあります。
出典1:全日本民医連(←参照リンク)
出典2:ヘルスプレス(←参照リンク)
でも、乳頭状は、ラテン語で「papillosus」です。
また、解剖学では小さな乳頭状の突起または隆起やそのような構造を持つものの総称を「papillary」といいます。
さらに、「ラテン語で”孔”の意味」と説明している企業もあります。
出典1:LIXIL INAX ”オストメイト対応の多目的トイレのご提案”(←参照リンク)
出典2:NEXCO西日本 ”施設・サービスガイド ・ オストメイト対応トイレ”(←参照リンク)
でも、孔・穴(英 hole)はラテン語で「foraminis」です。
stomaっぽいラテン語に「stomachus」というのがありますが、これは英語のstomach(胃)です。
というように、上記三つの説がありますが、どれが本当でしょうか?
映画『ローマの休日』で、グレゴリー・ペックがオードリー・ヘプバーンを驚かすために、手を入れて抜けなくなったふりをするシーンでも有名な「真実の口」というのがあります。
この「真実の口」をギリシャ語で、στόμα τῆς ἀλήθειας (ストーマ テースアレーテエイアース)といいます。
出典:ギリシャの光(←参照リンク)
そして、Wikipediaの「List of medical roots, suffixes and prefixes(←参照リンク)」で、明確にギリシャ語が語源であることが示されています。
また、海外のサイトもいろいろ検索しましたが、「ギリシャ語の口を意味する」以外の説明は見付けられませんでした。
さらに、植物の葉っぱの「気孔」もstomaといい、これもギリシャ語の口が語源とされています。
ということで、「Stoma」の語源は、ギリシャ語の「στόμα(ストーマ;口)」が正しいんですね。
そうしたことも含めて、Stomaを日本語で人工肛門と訳すには、無理があるのではないか?とKenUは考えます。
ちなみに、英語の「ostomy(オストミー)」の語源が、door、entrance(ドア、入口)を意味するラテン語(Latin)の「ostium(オスティウム)」。
英語のostiumは、小さな孔、開口部という意味。
ラテン語のostiumは、mouth(口)を意味するラテン語「os(オース)」からの派生語です。
※出典:ブリタニカ百科事典(Britannica),ostomy, (from Latin ostium, “mouth”)
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さて、ストマですが、決して「肛門」なんかではありません。
ただの、腹部から突出した腸です。
人体機能として、直腸に便を溜めて、意思に関係なく肛門で留め、そして、うんこがしたくなったら、自分の意思で肛門を開放してトイレに便を排出します。
この機能を果たすのが、まさにストーマ装具のパウチです。
いつの間にか、便が溜まっていて、そして、都合の良いときに、自分の意思で便をトイレに排出します。
だから、正確には「パウチ」が「人工直腸&人工肛門」なのです。
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なぜ、KenUがこのようなことを主張するのか・・・
「永久気管孔」は「人工鼻」と言わず、そこに装着する、鼻の代わりになる機能がある装具を「人工鼻」といいます。
「人工心臓」は、心臓の代わりになって血液を循環させる機能があります。
「人工腎臓」は、腎臓の代わりになって血液をろ過してくれる機能があります。
さらに、
「人工心肺装置(じんこうしんぱいそうち)」は、心臓外科における手術などの際、一時的に心臓と肺の機能を代行する医療機器である(引用:ウィキペディア フリー百科事典)。
はい、もうおわかりでね。
代わりにもならないし、機能もないのに、人工肛門とはこれいかに?(笑
人工肛門というよび方は、「まわりの人達に誤解を与えていないか?」「悪いイメージを与えていないか?」ということです。
逆に、人体機能を代用している「義手・義足」を「人工手足」と言わない例外もあり、こちらは呼称に何か配慮があるのかな?と感じました。
だから、もしかしたら「人工肛門」は差別用語である可能性があるのではないか?と考えます。
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いまさら人工肛門という呼称を変えることに賛否両論あるとは思いますが、KenUは変えてもよいのではないか?と思っています。
「絶対変えるべき」とか、「変えねばならない」とか、「変わるまで断固戦うぞっ!!」という程の強い意思ではなくて、ちょっとした提案くらいの貧弱な意思です(笑。
何も鋼の錬金術師の「オートメイル」みたいなかっこいい用語を考えて変えようってわけじゃぁなくて、意味が的確な日本語名称でよいのだけれどなぁ~。
まあ、「人工肛門って、分かりやすくていいじゃん!!」と思っている方々もたくさんいらっしゃるでしょうけど・・・
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