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さて、前回 ”ストーマでも大型自動二輪ライダーになりたいっ!” という記事を書き、その中で、「ネットでヘルメットを購入したけれども、かぶってみたら少しきつかった」ということを書きました。
“失敗しないヘルメットの選び方” や “正しいヘルメットの選び方” など親切なサイトがあるのですが、頭囲で選ぶと失敗も。
今回は、私KenU独自のヘルメットの選び方理論を展開します。
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一般的に紹介されているバイクヘルメットのサイズの選び方は、一つの目安として頭の周囲の一番広いところ(頭囲)を測定して決めるという内容です。
”試着して選ぶ” のが一番よいのですが、「近くにバイク用品店がなくて、試着できないから、手軽にネットで購入したい。」と思われている方が多いのではないかと思います。
しかし、頭の形状は個人差があるので頭囲だけでサイズを選ぶのは難しいです。
事実、KenUは、試着なしで頭囲を頼りにAmazonからヘルメットを購入したら失敗しました。

アライ(Arai)のヘルメットのサイズ表では、頭囲55~56cmがSサイズ、頭囲57~58cmがMサイズ、頭囲59~60cmがLサイズということになっています。
頭囲をメジャーで緩めに測定したところ、56cm弱でした。
したがって、Sサイズ(頭囲55~56cm)を購入した結果、ピッタリすぎてきつかったのです。
そんな経験が、独自のサイズの決め方を考える動機になりました。
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まず、”日本人頭部寸法データベース2001” (←参照リンク)から頭の幅の長さ(頭幅)、頭の奥行の長さ(頭長)及び頭の周囲の長さ(頭囲)を調べました。
老若男女、日本人の頭のサイズ平均を計算したところ、頭幅156.1mm、頭長183.8mm、頭囲561.2mmでした(表1)。
表1 日本人頭部寸法平均値
頭幅と頭長との比率が0.85で、この値は老若男女でほぼ同じくらいなので、平均的な日本人の頭部形状の比率と考えて良いかも知れません。
Araiのヘルメットがこの比率に基づいて設計・製造されているかどうかはわかりませんが、もし、この比率を基準にヘルメットが製造されているとしたら、この比率からずれた頭部寸法の持ち主が、頭囲基準でヘルメットを選んだ場合には、幅方向にきついとか、前後方向にきついといったことがあり得ると思われます。
そこで、頭囲ではなく、頭幅と頭長からどのサイズのヘルメットを選んだらよいかの参考になる基準が作れないものかと思い、検討しました。
最初に、頭幅(W)と頭長(D)の数値から頭囲(L)を求めるための計算式を作りますが、そのときの 頭部形状として、A.楕円形、B.長円形、C.角丸長方形に単純化した3つのモデルを考えました(図1)。

モデルAとモデルBでは、DとWから計算される円周は、頭囲データよりも小さな値になるので不適当でした(表1の楕円近似周長参照)。
そこで、モデルCを採用し、頭幅に定数0.44265をかけた数値を角丸部の半径にすると頭囲データと一致しました。
すなわち、頭囲をL、頭幅をW、頭長をD、定数をkで表して、
L=2kWπ+2(W+D)-8kW ・・・・・式1 (※わかりにくいですが、πは円周率のパイです。)
ができました。
それから、頭幅/頭長比をx、D=W/xとして、式1を
W=L/(1/x+1-4k+kπ)/2 ・・・・・式2
のように変形して、 頭幅、頭長、頭囲(ヘルメットサイズ)の関係をシミュレートしたのが表2です。
表2 ヘルメットサイズに対する頭幅、頭長、頭囲のシミュレーション(S~L)
日本人の平均頭幅/頭長比=0.85を基準にした場合、Mサイズ(57cm~58cm)のヘルメットがちょうど良い頭幅が15.9~16.1cm、頭長が18.7cm~19.0cmになります(だいだい色に塗りつぶした部分)。
この範囲から大きく外れた場合には、頭幅か頭長のどちらかでフィットさせてサイズを選ぶのがよいと思われます。
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KenUのサイズを改めてきっちりと計り直してみたところ、頭囲55.0cm、頭幅16.0cm、頭長18.0cmでした。(※頭幅、頭長は頭をスライドドアにはさんで測定しました。)
つまり、KenUは頭幅/頭長比=0.889で、日本人の平均よりも前後につぶれた形の頭だということがわかります。
上の表2でいうと、一番下の行(0.900)の、左から2番目の列(16.2cm、18.0cm)が近い感じです。
このことは、日本人の平均的な頭形状で頭囲55.0cmの人よりも、KenUは頭幅が広いということであり、頭幅はSサイズ(15.3cm~15.6cm)ではなくMサイズ(15.9cm~16.1cm)の範囲におさまります。
シミュレーションの結果、KenUはMサイズのヘルメットを選ぶのが正解だったという結論です。
Sサイズでも何とか被れますが、その理由は、頭幅、頭長サイズからシミュレートされる頭囲よりも小さく、すなわち、モデルCの定数(k)=0.444265によるシミュレーションよりも角丸部分の半径が大きめ(なだらか)で、どちらかというとモデルBの形状に近似するためかも知れません。
図2に頭幅と頭長によるシミュレーションモデルC(黒)とKenUの頭囲による補正モデル(グレー)と頭囲56cm標準モデルC(グレー実線)の形状の違いを示しました。
このわずかな違いがヘルメットのフィット性に大きく影響すると思われます。

グレーの実線が頭囲56cm(Sサイズ)のヘルメットとすると、KenUの頭は若干側面がきついだけで、前後には余裕があるのがわかります。
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以上、頭囲からヘルメットサイズを選ぶ方法ではなく、頭幅と頭長から選ぶ方法について説明しました。
欧米人の頭幅/頭長比は日本人よりも小さく、つまり、顔が細くて奥行きが長いので、外国製のヘルメットの場合は、また違った別のシミュレーションが必要と思われます。
可能な限りヘルメットは試着して購入することをお勧めします。
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どんなヘルメットを選んだら良いかについては、既にヘルメットメーカーのサイトで述べられているとおりですが、そこには書かれていない情報をここでお伝えしたいと思います。
まず、アライのヘルメットの「取扱説明書」には、
「内装素材の改良によって、『少しきつめのサイズを選んでおけば、使っているうちに次第に馴染んで緩くなる!』といった事は、最近ではあまり期待できません。」と書いてあります。
それから、バイクはないのですが、
ヘルメットメーカーのOGKカブトによるこども(幼児)のヘルメット装着時の転倒シミュレーションの結果2)、3)では、
ヘルメットがきつい場合には、深深とかぶれずヘルメット頭頂部と頭蓋骨の隙間が広くなり、転倒して側頭部を打ち付けた時の頭蓋骨に及ぼすフォン・ミーゼス応力が強くなります。
逆にヘルメットが緩い場合には、転倒して頭部を打ち付けたときにヘルメットがずれることで、脳へのせん断応力が強くなります。
つまり、ヘルメットがきつくても、緩くても、転倒して頭部打撃を受けたときの脳へのダメージが大きくなることになります。
自分にあったフィット性の高いヘルメットを選ぶことが大事なんですね。
YouTube動画で「大きめのヘルメットを買って、詰め物をして合わせよう」という内容を紹介している人がいますが、要注意です。
何故かというと、 詰め物をしてヘルメットの頭頂部と頭蓋骨の隙間を広げています。
さらに、どう見ても大きめというよりも大きすぎるヘルメットを選んでいるようで、転倒して頭部打撃したときのヘルメットのずれもかなり大きくなりそうです。
なので、事故ったときには、頭蓋骨への強いフォン・ミーゼス応力と脳への強いせん断応力とのダブル作用で脳へのダメージがさらに強くなり、とても危険だと感じました。
事故っても後遺障害が残らないようにフィット性の高いヘルメットに買い換えるか、転倒して頭をぶつけないように気をつけてください。
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参考文献:
1) 河内まき子・持丸正明, 2008:日本人頭部寸法データベース2001, 産業技術総合研究所H16PRO-212.
Makiko Kouchi and Masaaki Mochimaru, 2008: Anthropometric Database of Japanese Head 2001, National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, H16PRO-212.
2)株式会社オージーケーカブト:平成21年度中小企業支援調査安全知識循環型社会構築事業報告書、子ども用ヘルメットの安全性と適合性に関する研究
3)吉田 健(OGK カブト):年齢別頭部有限要素モデルによる幼児用ヘルメットの外傷予防効果の評価
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QUANTUM-JのMサイズ57-58cmを購入しました。

SサイズのQUANTUM-Jは、口をあけたときに頬の内側を噛みにくくなるように、頬の締め付けを緩くするために、頬パッド(QJ FCS システムパッド)を交換しました。

標準では20mmが取り付けてありますが、それを2段階下げた12mmにしました。

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Lサイズより大きいヘルメットのシミュレーションも表3に追加します。
表3 ヘルメットサイズに対する頭幅、頭長、頭囲のシミュレーション(XL-XO)
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アライ(ARAI) QJ FCSパッド 12mm 4361
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