イヤホン・ヘッドホン、CDプレーヤーやBluetoothスピーカーなど、オーディオ機器を購入したときに、Amazon等のレビューを参考にした人も多いのではないでしょうか?
そして、「なぜ音質に関する評価がこれほど分かれるのだろうか?」「購入してみたけど期待していた音質と違った」などの感想を持った方もいると思います。
実は、その一因としてレビュワーの年齢が影響している可能性が見えてきました。
今回そのことを、産業技術総合研究所(産総研)の公開データをもとに解説していきます。
なお、産総研からは事前にデータ使用の許可を頂いております。
データ引用元:産業技術総合研究所, 『高齢者・障害者の感覚特性データベース』, 年齢別聴覚閾値分布(日本人データ)より[ URL : https://scdb.db.aist.go.jp/ ]
若齢者と高齢者の聴覚閾値分布
代表例として、20歳代男性と60歳代男性の年齢別聴覚閾値分布(125Hz, 250Hz, 500Hz, 1kHz, 2kHz, 4kHz, 8kHz)をグラフで示します。
なお、本記事グラフは、筆者が産総研公開のグラフから数値を読み取り作成しているため、元データとの若干のずれがある可能性について御留意ください。
まず、図の見方を説明します。
縦軸の「聴力レベル[dB]」とは、数値が大きい(図では下方向)ほどその周波数の音が聞き取りにくく、数値が小さい(図では上方向)ほど聞き取りやすいことを表しています。
すなわち、図の曲線が下方にあるほど、その周波数の聴力が低いことを示します。
横軸の「周波数[Hz]」とは、数値が小さいほど低音、数値が大きいほど高音を示します。
「10パーセンタイル」とは、指定した年齢・性別の者の聴力分布上,良い方(聴覚閾値の低い方)から10パーセントにあたる者の聴力(聴覚閾値)を指します。
すなわち、「50パーセンタイル」とは中央値を指し、「90パーセンタイル」とは90%の人よりも悪い聴力(聴覚閾値)を指します。
図から、若齢者では、各周波数における聴力低下が少なく、個人差が小さいことがわかります。
一方、高齢者では、特に高音域での聴力低下が顕著で、かつ個人差が大きいことがわかります。
各年齢の聴覚閾値分布
次に、20歳代から60歳代までの各年代の男性の50パーセンタイルの聴覚閾値分布をグラフで示します。
加齢に伴い、聴力が低下することが分かります。
とくに、高周波域(高音側)でその傾向が顕著です。
加齢に伴うイコライザーによる補正
加齢に伴い聴覚が減退した際、音域ごとにイコライザーで調整することにより、若年層が聞いている音の印象に近づけられる可能性があります。
そこで、各年齢の50パーセンタイル聴覚閾値分布から20歳男性を基準にしてイコライザー補正してみたのが、下の表とグラフです。
それぞれ、適音量との関係もあるため、このレベル補正が妥当かどうかはわかりません。
しかし、少なくとも、加齢に伴い高周波域のレベルを補正することは、一つの合理的な方法と思われます。
音響機器レビュワーの年齢影響
以上のとおり、年齢の違いにより、通常聞き取れる音域が異なっていることが分かります。
したがって、音響機器の音質評価に関するレビューにおいて、機器本体の性能だけでなく、レビュワーの年齢による聞こえ方の違いも評価に影響している可能性があります。
すなわち、一般的に「ドンシャリ」と言われる音響機器に関する評価がありますが、個々人の適切な音量調節時に若齢者では「シャリ(高音が冴える)」に感じたとしても、高音が相対的に聞こえにくくなる高齢者によっては「ドン(低音が響く)」に感じることもありえます。
Amazon等のレビューでは、レビュワーの年齢や音楽ジャンルの好みなどのバックグラウンドが不明です。
したがって、レビュー内容が参考にできるかどうかは自分自身の年齢も考慮することが必要かもしれません。
たとえば、高価格帯の音響機器では、比較的年齢が高い層のレビューが多いかもしれないし、一方で、低価格帯の音響機器では、若年層から働き盛り層のレビューが多いかもしれません。
そのように、レビューワーの年齢層を推測し、自分の年齢を照らし合わせて参考にするのも一つの方法かもしれません。
最後に・・・このブログを書いた理由
私は、今から13年前にバランスド・アーマチュア・ドライバーを3基搭載したSONYの高級イヤホン、XBA-30IP(希望小売価格27,170円)を購入したことがあります。
でも、期待した音質ではないと感じたので、すぐに娘にあげてしまいました。
すると娘は、「すごくいい音がする」といって喜んでいました。
そして、長い間「娘との音質の感じ方の違いはなんだろう?」と思っていました。
ところで、先日、AmazonプライムビデオでBBC制作のドキュメンタリー『スーパーナチュラル~野生の超能力者たち (吹替版)』のシーズン1、エピソード2 聴覚を見ていたんです。
そこでは、
- 人間が高い音を聞き取る能力は一生を通じて変化する
- 年齢と共に高い周波数の音が聞き取れなくなる
- 60代の人は10kHz程度まで、20代の人は16kHz程度まで、小さな子供は最高20kHzまで聞こえる
と説明していたんです。
すぐに「これか!」ということに気が付いたわけです。
その他、8年程前にBOSEのCDプレーヤーWave SoundTouch music system IVを購入したときに、娘はすごく音がいいと言っていました。
私はちょっと低音が強めに感じていました。
なので、数年前にシステムセットアップメニューから低音レベルを「NORMAL」から、弱めの「REDUCED」に変更しました。
これも恐らく加齢の影響なのでしょうね。
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