私KenUは、51歳のときに直腸がんの手術を受け、永久人工肛門になってから、今日で11年が経ちました。
今回は、これまで公開をためらっていた、実際にかかった医療費、支払われた保険金・給付金についてお話します。
また、がんになって家庭の経済にどのような影響があったのか、当時のさまざまな明細書を振り返り、明らかにします。
そして、医療保険・がん保険等を見直すトリガーになればと思います。
※11年前の情報なので、現時点での医療費とは異なることに注意してください。
1. 治療と医療費の実際
1-1 手術と入院の経過
2014年4月28日 (平成26年) に大腸内視鏡検査により、直腸がん、さらにS状結腸にポリープが確認されました。
ポリープについては、そのときにポリペクトミー (内視鏡的ポリープ切除術) を受けました。
直腸がんについては、5月15日に家族同席の場で正式に告知と治療説明があり、手術を受けることにしました。
入院は、手術日前日の5月22日にして、早ければ2週間で退院できる予定でした。
しかし、次のとおり手術を2回受けることになってしまい、差額なしの一般病室で24日入院しました。
- 1回目の手術 (5月23日)
腹腔鏡下直腸切除・切断術と人工肛門増設術 - 2回目の手術 (5月28日)
開腹小腸切除術 (術後合併症により腸閉塞を起こしたため)
さらに、退院後に精巣上体炎を発症し、6月19日から8日再入院しました。
恐らく、2回の手術により尿道カテーテルの留置期間が長かったので、尿路感染したのだと思います。
1-2 健康保険適用時の医療費
医療費が高額になる治療では、高額療養費制度が利用できます。
まずは、通常の健康保険適用 (3割負担) だけの場合の医療費を示します。
- 5月22日~5月31日(外科、麻酔科)
1,693,570円 (総医療費) ⇒ 508,071円 (3割負担) - 6月1日~6月14日(外科)
395,560円 (総医療費) ⇒ 118,668円 (3割負担) - 6月19日~6月26日(外科、泌尿器科)
277,550円 (総医療費) ⇒ 83,265円 (3割負担)
上記の合計金額は、710,004円にもなります(※別途、実費あり)。
退院時に、この金額をいっぺんに病院の窓口で請求されたら、戸惑ってしまいますよね。
でも実際には、高額療養費制度と付加給付制度により、自己負担はかなり低く抑えられました。
1-3 高額療養費制度適用時の窓口支払い
入院前に限度額適用申請をし、入院時に限度額適用認定証を提示しておいたので、退院時の請求金額は高額療養費制度の自己負担限度額が適用され、病院窓口での支払いはかなり少なくなりました。
私の場合の限度額は、次の所得区分が適用されました。
・区分ウ (標準報酬月額28万〜50万円の方)
月単位の上限額 = 80,100円 + (総医療費 - 267,000円 ) × 1%
窓口での支払い額は次のとおり。
- 5月22日~5月31日 (外科、麻酔科)
94,366円 (限度額適用) + 18,856円 (実費) = 113,222円 - 6月1日~6月14日 (外科)
81,386円 (限度額適用) + 12,106円 (実費) = 93,492円 - 6月19日~6月26日 (外科、泌尿器科)
2,776円 (6月分合算の限度額適用) + 7,212円 (実費) = 9,988円
※実費には、保険が適用されない、食事療養標準負担額 (1食260円)、病衣使用料 (1日64円)、ストーマ装具・関連用品料、診断書作成料などが含まれます。
上記、支払い合計は、216,702円 (178,528円 (限度額適用) + 38,174円 (実費) )になります。
なお、現在では、マイナンバーカードが読み取れる資格確認等システムを導入している医療機関であれば、マイナ保険証でも健康保険資格確認書でも、限度額適用認定証なしで高額療養費制度の自己負担限度額が適用可能になっています。
ただし、システムを導入していない病院、導入していてもシステムがダウンした場合には、限度額適用認定証が必要になります。
1-4 実際の自己負担額
私の勤め先だった健康保険組合には、付加給付制度があります。
高額療養費制度に加えて、1か月の自己負担額が25,000円を超えた分を後日払い戻してもらえる、というものです。
そして、限度額を超えた128,500円 (100円未満切り捨て) が払い戻されました。
つまり、直腸がんと精巣上体炎の治療にかかった実際の自己負担額は、88,202円 (限度額2か月分+実費) で済みました。
なお、付加給付制度の有無や、限度額は、加入している健康保険組合によって異なります。
2. 民間医療保険の概要
2-1 保険の内容
私が契約している生命保険は、日本生命の「ニッセイ みらいのカタチ」です。
当時の契約内容は、ほぼ保険外交員から提案されたままでした。
死亡保障以外の医療保障の内容を次の表に示します。
3つの医療保障 (3大疾病保障保険、総合医療保険、がん医療保険) に加入していました。
2-2 保険給付額
支払われた保険金・給付金の明細はつぎのとおりです(支払いまでにかかる遅延利息は省略)。
- S状結腸ポリープ (直腸がん手術前の大腸内視鏡検査時)
・手術給付金 25,000円 - 直腸がん (手術・入院)
・3大疾病保険金 3,000,000円
・入院療養給付金 25,000円
・疾病入院給付金 240,000円 (特定疾病倍額24日)
・手術給付金 200,000円 (手術2回)
・がん入院給付金 120,000円 (24日)
・がん手術給付金 200,000円 (手術2回) - 精巣上体炎 (直腸がん治療後の再入院)
・疾病入院給付金 40,000円 (8日)
上記の合計金額は、385万円 にもなります。
つまり、自己負担との差額は、+約376万円 。
私の直腸がんは、幸いにもステージ2だったので、術後の抗がん剤治療は不要で、多額の保険金・給付金が残りました。
なお、三大疾病保障保険については、一度保険金を受け取ると、それ以降の保険料の支払いおよび保障が終了します。
2-3 保障額の余裕度
例えば、大腸がんステージ4で抗がん剤治療「FOLFIRI+アバスチン療法」を1か月 (2サイクル) 実施した場合、総医療費は約68万円/月 (薬剤費52万円+その他16万円)と想定します。
すると、高額療養費制度の区分ウ (標準報酬月額28万〜50万円の方) に該当する方の自己負担限度額は、次のとおりになります。
月単位の上限額 = 80,100円 + (620,000円 − 267,000円) × 1% = 83,630円
※4か月目以降は「多数回該当」となり、月額44,400円に軽減されます。
さらに、年間の自己負担額をシミュレーションすると次のようになります。
- 年間限度額
[初月〜3か月目]83,630円 × 3 = 250,890円
[4か月目以降 (9か月間) ]44,400円 × 9 = 399,600円
合計:650,490円 - 以降も治療が継続する場合の年間限度額
[12か月以降 (12か月間) ]44,400円 × 12 = 532,800円
この試算から、残った保険金・給付金 (約376万円) で約6年10か月分の抗がん剤治療の費用を賄えることになります。
また、健康保険の付加給付がある場合、自己負担額は30万円/年になるので、12年6か月分に相当します。
結果的に私の場合、総合医療保険の給付金だけで十分ということになります。
でも、三大疾病保障保険やがん医療保険は比較的保険料が安かったので、加入しておいて大きなリスクヘッジになったと思います。
また万が一、病状が進行して緩和ケアでの入院が必要になった場合には、差額ベッド代(個室)や葬儀費用なども必要になるでしょうから、家族のことを考えると安心感はありました。
3. 家庭における経済的影響
3-1 収入への影響
仕事は6月いっぱいまで休み、その間は残っていた年次有給休暇 (年休) を使いました。
7月に職場に復帰しましたが、しばらくは年休の半休利用制度を活用して半日勤務にして、年休は使い切りました。
このように、入院・療養期間中は年休をうまく活用できたため、基本給には影響ありませんでした。
ただし、年休を使い切った後も定期的に検査やストーマ外来への通院が必要だったため、平日に欠勤した分の給与が下がりました。
さらに、冬の賞与の査定が7段階評価 (S, A, B+, B, B-, C, D) の「B− (ビーマイナス)」になり、ボーナスも下がりました。
でも、生活に支障が出るほど収入が減ったわけでもなく、総合的に見て経済的な影響はほとんどなかったと言えます。
3-2 保険金・給付金で始めた人生の再出発
手術して永久人工肛門になったことは、ボディーイメージの変化などにより精神的に相当なダメージがありました。
そして、気持ちを切り替えるために、残った保険金・給付金は、改めて人生を楽しむ費用として消費しました。
- 大型自動二輪の免許取得に、約20万円。
- 大型バイク+バイク用品購入に、約120万円。
- メルセデス・ベンツ購入の頭金として、200万円 + 約14万円 (ローン金利)

このように、「過剰だったかも?」と思われた保障内容も、人生をリセットしてリスタートする資金になって消え去りました。
じつは、がん保険を申し込むときに保険外交員に対して「自分はがんの家系じゃないし、喫煙もしてないし、会社の定期健康診断結果もA評価だし、がんになんかならないと思いますよ。」なんて言ってたんです (笑) 。
でも、結果論として有益なものになりました。
4. まとめ
私は、直腸がんの治療にあたって、高額療養費制度のことも知っていたし、十分な保障の医療保険を契約していたこともあって、経済的な不安はまったくありませんでした。
そして、経済的余裕が心の余裕につながり、結果的に治療や気持ちに良い影響を与えてくれたと思います。
もちろん、長年にわたって支払ってきた保険料はそれなりの額になります。
なので、契約の際には支払う保険料と保障のバランスを見極めることは大切です。
保険に入るかどうかは、その人の価値観や経済状況によると思いますが、必要性や将来への備えを考えるきっかけとなれば幸いです。
5. 余談
5-1 所得区分
69歳以下の方の高額療養費制度の自己負担限度額を決める所得区分は、政府(厚生労働省)の説明では「標準報酬月額28万円 ~ 50万円 (年収 約370 ~ 約770万円)」 の場合、「区分ウ」としています。
しかし、私は年収770万円を超えていても「区分ウ」でした。
なぜならば、区分は、年収ではなく、あくまでも標準報酬月額で決まるからです。
極端な話し、たとえば残業やその他の手当なしの標準報酬月額が50万円の人の場合、年額は600万円。
それに加えて、会社の業績や個人の成績しだいで、春、夏それぞれのボーナスが3.5か月~4か月分支給されることもあります。
すると、月収にボーナス (春) 175万円 ~ 200万円、(冬) 175万円 ~ 200万円が加わり、年収が950万円~1,000万円になっても「区分ウ」です。
また、残業が多くて標準報酬月額が高い人は、基本給が低いので賞与額も低くなり、年収は下がります。
なので、政府が例示している年収に惑わされずに、自身の標準報酬月額がいくらになっているかを理解しておくことが大切です。
後日の記事、『高額療養費制度の政府の“年収換算”がおかしい?!想定モデルをシミュレーション』では、さらに掘り下げてシミュレーションしています。
5-2 高額療養費制度の改定
2025年1月 (和7年) に政府は「高額療養費制度の見直しについて」を発表しました。
もし、自分の実例をシミュレートした場合、負担がどのように変わるのか?
いったん見送りとなった発表当初の2027年8月からの3段階目の引上げ案のうち、次の所得区分の式で計算してみます。
・所得区分 (標準報酬月額44万円~50万円の方)
月単位の上限額 = 138,600円 + (総医療費 - 462,000円) × 1%
総医療費は、本ブログ1-2項の金額を当てはめます。
- 5月22日~5月31日 (外科、麻酔科)
1,693,570円 (総医療費) ⇒ 150,916円 (見直し限度額適用) - 6月1日~6月14日 (外科)
395,560円 (総医療費) ⇒ 137,936円 (見直し限度額適用) - 6月19日~6月26日 (外科、泌尿器科)
277,550円 (総医療費) ⇒ 2,776円 (6月分合算の限度額適用)
上記合計金額は、291,628円。
本ブログ1-3項の実例の実費を除いた限度額合計は178,528円なので、制度見直しによる負担増は113,100円になります。
それでも、総合医療保険給付のみでカバーできています。
さらに、付加給付制度がある健康保険組合に加入していれば、制度改定でも自己負担額は変わりません。
もし、制度改定になる場合、付加給付制度のない健康保険組合に加入されている方は負担増となる可能性があるので、民間医療保険への加入は検討すべき課題となるでしょう。
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