ストーマ装具を交換するときに、どんな皮膚洗浄料を使用するのが良いか?

2015年のブログもこれで書き納めです。

タイトルについては、はっきりと、これが一番良い、という結論は出ていません。
でも、バックグラウンドを調べてみて、今自分が使っているもので良いのだろう、と考えられたので、記事にしてみます。

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さて、人工肛門保有者のみなさんは、ストーマ装具交換時の洗浄は、どのようにしていますか?

KenUは、洗浄力がおだやかな弱酸性の泡タイプの清拭料を使用して、ストーマと周囲の皮膚を洗浄し、その後お湯で洗い流します。(入浴直前にお風呂場でします。)

これは、病院で教わった方法で、術後の寝たきりのときにも看護師さんにそのようにされていましたし、ストーマ外来でWOCナースさんにもやってもらっている方法です。

ikinarilarcのYouTube動画でも紹介しています。

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さて、まずは、pHについて。

健康な肌のpHは、4.5~5.5(弱酸性)。
(出典:皮膚のpH測定テスト、サイエンス株式会社)

「皮膚が弱酸性だから、弱酸性のせっけんで洗うのが良い」と誤解されていますが、pHの問題ではなくて、洗浄力が穏やかで皮脂を除去し過ぎないものが、皮膚を傷めにくいということのようです。

もし、皮膚のpHと同じpHの洗浄料で洗うのが良い、という理屈になってしまうと、ストーマはストーマと同じpHの洗浄料で洗わなければいけない、ということになってしまいます。

では、ストーマ(大腸粘膜)のpHっていくつなの?
KenUが自分で実測した結果では、pH8.5~pH9.0でした(関連記事のリンク参照ください)。

では、うんちのpHは?
成人の便は、pH5.5~pH8.0。
その範囲を超えることは、ほとんどない。
便の部分によるpHの差がある。
水分が多く、有機酸も多いと、便pHは低くなる傾向がある。
(出典:カルピスよくあるご質問 http://www.calpis.co.jp/flora/qa/ )

腸内のpH が低いほど便の色は黄色っぽく、pH7.0(中性)を越えると茶色っぽく、pH8.0(弱アルカリ性)になると黒っぽくなる。
(出典:糞便中pH測定、株式会社テクノスルガ・ラボ)

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次に、ストーマケアについて。

『ABCD─Stoma®ケア』(←参照リンク)というのをご存じですか?
一般社団法人 日本創傷・オストミー・失禁管理学会で編集しています。

ストーマケアに従事している医療者とオストメイトが、ストーマ周囲皮膚障害の重症度を客観的に評価できるスケール(ものさし)を用い、適切なスキンケア方法を導き出すツールです。

その中からいくつかピックアップすると・・・

皮膚障害の原因の一つに、”排泄物の付着”があげられていて、その要因に”皮膚保護材の浮き”があげられています。
「水分・油分がのこったままで装具装着をしている。」場合に皮膚保護材が浮きやすくなることから、「弱酸性の洗浄剤を用いて皮膚洗浄し、十分に洗い流す。」がケア:実践・指導の内容になっています。

また、皮膚障害の別の原因に”感染”があげられていて、その要因に”不適切なスキンケア”があげられています。
「装具交換時に皮膚洗浄を実施していない。」場合には、「装具交換時は、洗浄剤を用い十分に皮膚を洗浄する。」がケア:実践・指導の内容になっています。
ここでは、とくに「弱酸性の」とは書かれていません。

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さらに、洗浄力について。

洗浄料の主な洗浄効果成分は、界面活性剤と呼ばれるものです。
界面活性剤には、いくつかのタイプがあり、「イオン性界面活性剤」 と 「非イオン性界面活性剤(ノンイオンとかノニオンとも言う。)」とに大別されます。
さらに、イオン性界面活性剤でも「アニオン界面活性剤」、「カチオン界面活性剤」、「両性界面活性剤」に分類されます。

界面活性剤のタイプによって、使用用途や洗浄力が色々です。

ストーマは、皮膚とは違います。
大腸です。
そして大腸表面には粘液が分泌され、ムチンと呼ばれる粘膜で覆われています。
ムチンは、糖たんぱく質です。
糖たんぱく質は、イオン性界面活性剤をよく吸着します。
洗浄力が強い界面活性剤で洗うのは不安です。
なので、ストーマの洗浄には、非イオン性界面活性剤の選択が良いかもしれません。

また、抗菌成分、殺菌剤配合の泡せっけん、というものが市販されています。
皮膚はバリアー性があるので、そのような洗浄料の皮膚への使用は問題ないでしょう。
でも、大腸粘膜に使用するのはどうでしょう?
殺菌剤である硝酸ミコナゾールの膣粘膜からの吸収性に関する論文があります。
それによると、投与量の5~10%が粘膜から体内に吸収されるとのこと。
抗菌剤、殺菌剤を含むソープは、ストーマ洗浄には使わないほうがよいように思います。
そもそも、洗浄料の界面活性剤の作用で除菌されるのですから。

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ということで、ストーマ装具の交換時には、皮膚とストーマを同時に洗浄しますが・・・
このまま今使用している、弱酸性で、洗浄力がマイルドな非イオン性界面活性剤で、抗菌成分や殺菌剤が入っていないもの、で良いなと思っています。

それから実際には、KenUは、入浴時に身体を洗うのと同時に、ボディーソープでストーマ周囲の皮膚をもう1回洗っています。
皮膚保護材(シレッセ スプレー)をしっかり落としたいし、清拭料で洗っただけは物足りない感じがするので。
ちなみに、使っているボディーソープは、Dove RICH Care(ダヴ リッチケア)シアバター&バニラ ボディウォッシュです。 香りが好き。(※これでストーマは洗いません。)
pHを測定した結果、pH7.0付近でした。
これまで、とくに問題はありません。
毎回、ストーマと皮膚をよく観察して、状態に応じてケアすれば良いと思います。

ハビナース 清拭料 泡タイプ/10676 500ml
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余談ですが、ストーマケアを調べていてよく目にするのが、「下痢便はアルカリ性だから、弱酸性の皮膚への刺激が強く、かぶれを起こす。」というもの。

しかしそれは、このブログ記事の「うんちpH」での説明とは逆のことを言っています。
下痢便は、水分が多いし、黄色っぽいから、アルカリ性ではなく弱酸性です。

十二指腸や小腸から分泌される消化液は、アルカリ性。
それによって胃酸(pH1.5~2.0)が中和される訳ですが、十二指腸のpHは4.0~7.0であり、アルカリ性にはなりませんし、小腸内のpHは6.0~8.0であり、胃酸を中和しアルカリ性にはなりません。

下痢便の黄色っぽい色は、肝臓で生成されて十二指腸に排出される、黄褐色でアルカリ性の胆汁によるものなので、それで、誤解を生じているのかもしれませんね。

後日、自分の便で下痢便は酸性であることを確認しました。



************** 関連記事 **************

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pHと硬度は本当はどれがいい?ミネラルウォーター比較一覧表とグラフを作った。

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