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さて、以前「市販の医療用粘着防水フィルムを用いた入浴時ストーマ装具の防水検討」という記事を書きましたが、それの続きです。
ちなみに、ストーマを見慣れていない人には気持ち悪いでしょうから、ブログ中の写真ではストーマを手で隠して見えないようにしています^^
まず、あらためて概要を簡単に説明すると・・・
ストーマ装具が濡れないように全体をカバーして、ストーマ装具をつけたまま浴槽のお湯に漬かる入浴を可能にすることが目標です。 このときに、毎日繰り返し行っても、低コストでということと、皮膚を傷めないということも条件です。
なぜならば、高いコストでとか、皮膚にやさしくないとかならば、入浴時の防水製品は既に販売されていますから。
今回は、これまでいろいろ考えて実験してきた中で、失敗した検討も記事にして笑いを獲りたいと思っています。
一応、今回開発して日常的に使用しているので、前回みたいに真面目に論文風にまとめてみたので興味がある方はどうぞ・・・
「医療用粘着防水フィルムを使った入浴用ストーマ装具防水カバーの開発」 ←PDFファイル
前置きは、以上です。はいっ、では以下どうぞ^^。
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目 次
1.シリコーンタッパによるストーマ装具の防水失敗
2.シリコーンラップによるストーマ装具の防水失敗
3.自作のパウチ式フランジ付防水カバーによる防水失敗
4.うまくいった改良型自作ショートタイプ防水カバーによる防水
5.コスト計算、その他
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1.シリコーンタッパによるストーマ装具の防水失敗
ストーマ装具を外して入浴するときには、ストーマにプリンカップを被せて浴槽に浸かります(「ストーマで困るのはスボンと下着と入浴とセックス」←参照リンク)。
なので、ストーマ装具を付けたまま入浴するときには、防水用に装具に被せられる容器があればいいのでは?と考えました。
それで、装具を折り畳んだときの大きさにぴったりで、お腹にあてて押し付けてもソフトな感触なものが良いだろうと思い、あれこれ探したところ・・・
見つけましたよ。
ミッフィーちゃんのシリコーン容器を。
miffy ミッフィー シリコン折りたたみ容器 角型(M) MF-2電子レンジ調理器具 シリコン容器 ラン… |
容器口部には固いプラスチックの枠がはめ込んであるので切り取って体にフィットするように改造し、さらに、身体洗浄時には両手をフリーにする必要があるので、防水フィルム(優肌パーミロール)を周囲に貼り付けて腹部に固定しました。
ミッフィーちゃん、こんなことに使ってごめん!(笑

さて、これを両手で抑えつけて浴槽のお湯に浸かったところ・・・
被せた容器内の空気量が多いため浮力が強くて、長い間お腹にぴったりと抑えているのは無理っ!。
腕の力と持久力が必要になります。
それから、シリコーンに対するアクリル系粘着剤の粘着力は弱くて、浮力で浮き上がろうとする容器から防水フィルムは簡単に剥れてしまいました。
ということで、浸水してストーマ装具は濡れてしまって防水に失敗!
また無駄なものを買ってしまいました^^;
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2.シリコーンラップによるストーマ装具の防水失敗
シリコーンテープは皮膚にやさしく角質の剥離が少ないので、貼り直しができたり繰返しの接着ができたりします。
ということから、シリコーンテープの価格が多少高くても、そのぶん何回か繰り返して使用すればコストが下がるだろうと思い、シリコーンテープを使用した繰返し使用が可能な防水カバーを考えてみました。

シリコーンテープによくくっつくと思い、100円均一(ダイソー)から「シリコーン伸びラップ」を購入し16cm×16cmの大きさに切断して、これと3Mの「やさしくはがせるシリコーンテープ」で“湯ったりシート”的な防水カバーをしてみました。

この「やさしくはがせる・・・」は基材に柔軟性や伸縮性がなく、皮膚に貼付したときにごわごわして、フィット性もイマイチで、つっぱり感があり、「だめだこりゃっ!?」といった感じでした。
しわしわになってあちこちに隙間もできてしまっているので、案の定浴槽に浸かった途端にあっという間に中に水が浸入してしまいました。
ということで、失敗!
また無駄なものを買ってしまいました^^;
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3.自作のパウチ式フランジ付防水カバーによる防水失敗
以前検討していたフランジ付き防水具の改良型を作ってみました。
フランジには皮膚への肌触りと柔軟性を考慮して、積水化学のソフトロンS(厚さ3mm)というポリエチレン発泡体を使用。
発泡体といってもスポンジみたいな連続気泡ではなく独立気泡なので水を吸いません。
本当は厚さ1mmくらいのポリエチレンフォームが欲しかったのですが、少量で入手可能なのがこれしかなかったので、これで我慢です。ソフトロンの通信販売サイト ゴム通←参照リンク
これに、ポリエチレンフィルム(厚さ0.04mm;ゴミ袋を切ったもの)をヒートシーラーで熱溶着してパウチを形成して、ストーマ装具にそのまま覆い被せられる防水カバーを作製しました。
そう、実はこれを作りたかったからヒートシーラーを購入したのでした^^(「家で実験用の試作品を作製するのにヒートシーラーを購入!」←参照リンク)

フランジの開口部が“猫ちゃん”みたいな形になっているのは、周囲に防水フィルムを貼って皮膚に固定する時に、ストーマ装具に引掛けて位置合わせしやすくするためです。
もうこのブログで公知になったので特許は取得できないな(笑
今回も繰返し使用を考えて、柔軟性と伸縮性のあるポリウレタンフィルム基材にシリコーン粘着剤を塗布したスミスアンドネフュー(Smith & Nephew)のオプサイトジェントルロール2.5cm幅を使用してみました。
本当は実験するには5cm幅のほうが良いのでしょうが、高価だったので購入を躊躇してしまい、2.5cm幅で我慢しました。

おおっ、貼った感じはやわらかくて、なかなかグッドです。
でも、ちょっと粘着力が弱いかな? 3Mのより弱い感じがします。
浴槽に浸かると、またしても空気の浮力で袋が浮き上がりフランジが上に引っ張られてテープが剥がれてしまいました。2.5cm幅だったことも影響しているかも?
防水失敗っ!!(笑

後日、リベンジということで湯船への入浴はあきらめて、シャワー浴にチャレンジしてみました。
だめでした。中に水が入ってしまいました。
原因は、フランジの発泡体が厚いために皮膚との段差が大きいこと、オプサイトジェントルロールの自背面接着力が弱いこと、この二つが影響して重ね貼りした部分に隙間が出来てしまうため、ということがわかりました。

シャワーとか洗い流しの水圧でここの隙間から水が入り込んでしまうんですね。
フランジ部分に厚さ1mmのボラーラ(積水化学工業のポリエチレンフォーム)を使えば、段差が小さくなって隙間も小さくなるかも知れません。(セキスイさんボラーラのサンプルを少しください。)
でも、それ以外にもいくつか駄目なところがあります。
それは・・・
このテープは剥がした後は、クタッとなってしまうのと、粘着力も弱くなっているようで、繰返し使用はできそうもない感じがしたことと、
防水具全体の長さが長いので”おち○ち○”に当たってしまい邪魔だということです(笑
ということで、失敗!?
また、無駄なものを買ってしまった?
いいえ・・・
失敗は成功のマザーです(笑
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4.うまくいった改良型自作ショートタイプ防水カバーによる防水!
はい、自作防水カバーの長さを短く作り直して、固定に使用する防水フィルムを「優肌 パーミロール」に変更しました。

15cm幅の優肌パーミロールを裏面剥離紙に印刷された目盛りに合わせてハサミで4cm幅にちょきちょきと切って、長さ15cm×幅4cmの短冊を4枚用意します。

ストーマ装具の下を折り曲げて防水カバーをかぶせて、フランジ周囲に優肌パーミロールを貼ります。
そのときにポイントがあって、まず下側、つぎに両サイド、そして最後に上側の順番に貼ります。

これは、体にお湯をかけたときに上から下に流れる水圧でフィルムの重ね貼りした部分が剥がされて、浮きや隙間が生じ難いようにするためです。 そうすることでより防水性を高めます。

そして、浴槽のお湯に浸かるときには、両手で防水カバーを抑えたまま湯船に入ります。
空気の浮力で上に引っ張られるのを抑えるためです。
はい、防水成功です!
ストーマ装具を濡らさずに湯船の中に浸かることが出来ました。
シャワー浴でも、直接シャワーを防水フィルムを貼付したところに当てなければ大丈夫でした。
長さを短くしたので、「ペ○ス」にもあたらず邪魔になりません^^
なお、体を洗浄した後は、防水フィルムが一部剥がれて浮いていたりすることもあるので、浴槽に再度浸かるときには防水性に注意が必要になります。
風呂上り後に取り外した防水カバーは、消毒用エタノールを皮膚に触れる部分と袋の内側に噴霧してから、ティッシュペーパーでふき取り除菌し、洗濯ばさみで吊るし干しして乾かして再使用します。

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5.コスト計算、その他
今回のこの防水カバーは、KenUが使用しているホリスターのツーピースストーマ装具(57mm)(←参照リンク)専用です。
他のストーマ装具に使用する場合には、装具面板サイズや形状が異なるものがあるので、フランジサイズや開口部の猫ちゃんの形を変えて設計しなおす必要があるかも知れません。
コストですが・・・
[材料費]
ソフトロンS黒/厚み:3mm/幅:450mm/長さ:900mm 単価 ¥937- (税抜¥868-) x 数量 1 = ¥937
ポリエチレンフィルム/ゴミ袋使用=ほぼ¥0
〔日東メディカル〕優肌パーミロール(ハンディロールタイプ) 15cm×10m×1巻 品番:H24R15 ¥ 7,344
これで防水カバーが18コ作れるので、一個52円です。破れるまで繰り返し使用できるので、入浴1回当たりの防水カバーのコストは数円にしかなりません。
優肌パーミロールは入浴毎に使い捨てになりますが、10m÷16cm=62回入浴できるので、入浴1回当たりのコストは7,344円÷62回=118円です。
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実は、防水しているとはいえストーマ装具をつけたまま浴槽のお湯に浸かると、長湯して汗をかきやすいことから、面板の粘着性低下や皮膚の蒸れが生じてあまり良くはないのではないかと最近思っています。
なので、装具をつけているときには基本的にはシャワー浴で済ませるようにしています。
そのときにももちろん改良型ショートタイプ自作防水カバーをします。
ストーマ装具のパウチに便が少量入っていても、いちいち排便するのが面倒なのでそのまま防水カバーを装着します。
それから、シャワー浴の場合、防水カバーのフランジの下側に貼り付ける防水フィルムは不要です。
しかも、すべての部分で4cm幅は必要なくて、上と臍側は3cm幅で済むので、入浴1回当たりのコストは7344円÷(10m÷10cm)=74円です。
夏も終わり涼しくなってきたので、シャワーでなく温まりたいなぁと思ったときには・・・
浴槽の中でひざ立ちして(※湯面に防水具のフランジが浸からないように)、そのまま浴槽の中で片手桶を使って何度もかけ湯をして、汗をかかない程度に適度に体を温めます。
もう片方の手は、防水カバーの上側を覆って、直接流水水圧がかからないように保護します。
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オストメイトになっておよそ4箇月。
やっと、満足のいく日常の入浴方法が定まりました。
いやぁ~、それにしても入浴方法ひとつ検討するのにずいぶんと時間と金がかかったなぁ~(笑
次は、どうやって水泳するか。
出来なくなった水泳をどう復活するか考えたいと思います。
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