はじめに
がんの生存率の評価では、がんの発見が早いほど、リードタイムバイアスによって、生存率が実態よりも高く見える可能性が指摘されています。
つまり、症状が出る前に早期発見された場合と、症状が出てから発見された場合とでは、同じ年齢で死亡した場合に、症状が出る前から症状がでるまでの期間の分、生存時間が長くカウントされるということです。
生存率については、がんが「完治」する割合を意味することではないことに、注意が必要です。
私はリードタイムバイアスや〇〇年生存率という概念自体、さしたる重要な意味を持たないと考えています。
なぜならば、早期発見のステージ1や2と、症状が出てからのステージ3や4とでは、治療のアプローチが全然違うからです。
術後の抗がん剤治療や延命処置が入ってくるかどうかは大きな違いで、単純に生存率を比較しても、そもそも前提条件が違いすぎて「公平な比較」になりません。
たとえば、ステージ1で手術だけして元気に暮らす人と、ステージ4で抗がん剤を続けて延命してる人を同じ土俵で比べるのには無理があります。
なお、私の場合、直腸がんステージ2で、肛門、リンパ節、直腸を切除する手術を受けて永久人工肛門となり、その後10年以上生存しています。
「生存率」というのは「どれだけ長く生きられるか」にこだわった数字で、実際のところ、患者さんにとって大事なのは「どう生きるか」であって、「生存中の質」にフォーカスした評価が必要だと感じます。
抗がん剤で副作用に苦しみながら延びた数ヶ月と、治療せずに穏やかに過ごす数ヶ月が同じ「生存期間」としてカウントされるのには、違和感があります。
極端な例として、もしもリードタイムバイアスを完全に補正できると仮定して、ステージ1から4まで全ての10年生存率が80%で揃ったとします。
ステージ1、2は抗がん剤なしで手術だけで済むなら、体への負担も経済的な負担も比較的軽い。
一方で、ステージ3、4になると、抗がん剤や放射線治療が入り、副作用も強く、経済的な負担も跳ね上がります。
そう考えた場合、同じ「80%生存」でも、そこに至るまでのプロセスが全然異なります。
そういったことから、リードタイムバイアスによってがんの早期発見が過少評価されることには大きな問題を感じます。
そこで、リードタイムバイアスに影響を受けない、新しいがんの評価指標を提案します。
指標1: ステージ別の医療費割合
ステージ1, 2の患者は手術後、抗がん剤治療が必要ないか、短期間で済むケースが多いです。
こうした患者の医療費は比較的抑えられます。
これに対して、ステージ3, 4は手術後も抗がん剤や放射線治療が長期にわたるため、医療費が高額になります。
ステージ別の医療費を評価することで、治療のコストを把握し、治療法ごとの効果と費用を比較できます。
指標2:ステージ別の高額療養費制度適用率
高額療養費制度の利用状況をステージ別に評価することで、どのステージの患者がどれだけ制度を利用しているのかを把握できます。
たとえば、ステージ3, 4の患者が高額療養費制度を多く利用しているとした場合、医療費の負担がどれくらいになるか、どの程度患者や保険制度に影響を与えるかが明確になります。
さらに、制度利用の効率性や無駄な医療費を減らすための改善点も見えてきます。
例えば、再発率や治療の効果に基づいて、治療方法や延命治療に関する政策変更を促すことができます。
早期発見の有効性の評価
この新しい指標を使えば、ステージ別の治療法に対する資源の配分や、治療法ごとの医療費の抑制方法を見直すことができます。
たとえば、ステージ1や2の患者が治癒後に再発しない限り医療費がかからないのに対し、ステージ3や4の患者には延命治療に多額の医療費がかかるとすれば、早期発見の重要性や治療方法の見直しが求められるかもしれません。
制度的な改革提案
ステージ別の医療費評価と高額療養費制度適用率をもとに、制度改革や保険料の調整を提案することができます。
例えば、ステージ1, 2の治療は安価で、社会的な負担も少ない一方で、ステージ3, 4の患者が高額療養費制度を多く利用している場合、保険料の増額や支援方法を再検討するなど、政策の最適化が可能になります。
まとめ
がんの評価に医療費評価や高額療養費制度適用率を取り入れることで、がんの早期発見の有効性を経済的に評価できます。
また、がん治療における生の質に目を向けた評価が可能になります。
リードタイムバイアスの影響を受けないという点が、この新しい評価方法の非常に重要な強みです。
通常、生存率の統計では、早期発見によって診断時点が早くなり、結果的に患者の生存期間が長く見えるというリードタイムバイアスが問題になります。
しかし、提案した方法では、生存期間を単純に評価するのではなく、医療費や治療の実態を基にした指標を導入することで、早期発見の効果がどれだけ実際の治療に影響を与えているかをより正確に評価できます。
さらに、がん治療の実際のコスト対効果や社会的影響がより正確に評価され、医療制度の改善に繋がる可能性が高いです。
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