定年後に新NISA投資を始める?金融庁シミュレーション完全再現Excel計算式も公開

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目次

インフレに対応するには株式投資が有利
将来の物価上昇率はわからない
老後に2000万円もあったら悠々自適
想定利回りで運用できるとは限らない
定年後から始める新NISAはおすすめしない理由
新NISAシミュレーションのエクセル計算式
おわりに

インフレに対応するには株式投資が有利

2019年に金融庁が提出した「金融審査会 市場ワーキング・グループ報告書」で話題になった、いわゆる「老後2,000万円問題」を記憶しているでしょうか?
老後30年の生活費として、年金だけでは足りず、2000万円が必要という試算。

しかし、2,000万円あったとしても、物価上昇が続いた場合、お金の実質価値が減少します。
もしも年2%のペースで物価上昇が続いた場合、2000万円を20年後に使うとなると、実質価値は67%(約1340万円)に減っています。
そうしたインフレによって目減りするお金を増やすことができるのは、株式投資です。
だから、新NISAをやらないのは大損!
というのが、プレジデントの記事です。

ちょっと補足します。
インフレは、株式投資にとって有利に働きます。
なぜなら、インフレで収益が増える企業は、株価が上がる可能性があるから。
よって、インフレで資産価値が減少しても、株式投資で増やせる可能性があるというわけです。

物価上昇率が0.5%~2.0%のときに、2000万円が数年後にどれくらいの実質価値になるかをシミュレーションすると、次に示すグラフになります。

【計算式】
FV=CV × ( 1 – X/100 )^Y
・FV:将来の価値(円)
・CV:現在の価値(円)
・X:物価上昇率( %)
・Y:経過年数(年)

【備考】 ^は累乗演算子


毎年2%ずつ物価が上昇した場合(オレンジ色の丸印)、35年後に物価が2倍になり、2000万円が半分の1000万円にまで価値が下がります。
つまり、2000万円で、1000万円分のものしか買えなくなることを意味します。

物価上昇率が0%であれば、2000万円の実質価値はいつまでたっても2000万円ということになります。

将来の物価上昇率はわからない

日本において、今後、物価上昇率はどれくらいになるでしょうか?
想像つきません。

そこで、過去実績について、金融資産価値の変動をシミュレーションすると、次に示すグラフになります。

【基になるデータ】
総務省統計局、消費者物価指数(CPI)>長期時系列データ>品目別価格指数>全国>年平均>持家の帰属家賃を除く総合指数(1947年~最新年)
出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)(https://www.e-stat.go.jp/)

【備考】
KenUが、1982年・2000万円を基準として、過去(1982年~2022年)のデータを金融資産価値の推移に加工しなおしてシミュレーションした。


過去39年間で、2000万円が1550万円の価値まで減少しました。
平均の対前年比物価上昇率は0.65%です。
なお、1982年~1992年の9年間では1.72%、バブル期1986年~1991年の4年間では1.8%、近年2012年~2022年の9年間では0.98%でした。

今の政府・日銀は2%の物価上昇率を目標としていますが、どうなるでしょうか?

老後に2000万円もあったら悠々自適

さて、「老後2000万円問題」というのは、65歳以上の夫婦無職世帯の実収入が209,198円に対して、実支出が263,718円となっていることから、毎月54,520円が不足するとのことでした。
そのため、老後を30年間と想定すると、54,520円 × 12か月 × 30年 = 19,627,200円となって、約2,000万円が必要という試算がなされました。

しかしそれは、2017年の総務省「家計調査」の結果を元にして厚生労働省が作成し、金融庁に提出された資料に基づきます。

現在は、総務省統計局から2022年の家計調査報告が出されています。

それによれば、可処分所得214,426円に対して、消費支出が236,696円となっていることから、毎月の不足額は22,270円になります。
老後30年として単純計算すると、22,270円 × 12か月 × 30年 =約800万円の不足になります。

ただし、この計算には、物価上昇率と年金のマクロ経済スライド調整が含まれていません。
それを踏まえて大雑把にシミュレーションすると、次に示すグラフになります。

物価上昇率を0.5%~2.0%として、物価上昇率時それぞれのマクロ経済スライド調整による年金改定率を0.1%~0.4%としました。

物価上昇率と同じ率で年金が改定されて増えればよいのですが、そうはなりません。
なので、年々物価が上昇していくと、年々消費支出が増加します。
すると、可処分所得に対する消費支出の割合が年々大きくなり、不足分が年々増えていくことになります。
国が目標とする2%物価上昇率を達成した場合には、30年間の不足額は、約800万円ではなく、1135万円になります(グラフ中、水色の丸印)。

このように、2022年の家計調査データに基づき計算すると、老後2000万円問題ではなくなっています。
2000万円もあれば、65歳~105歳までの40年間、悠々自適な生活を送ることができることになります。

想定利回りで運用できるとは限らない

KenUのように定年退職し、働いていない人が新NISAをはじめようとした場合、退職金などの蓄えを削りながら、積立て投資をしていくことが考えられます。

そこで、2000万円を元手に、新NISAに毎月3万円ずつ20年間、または毎月10万円ずつ10年間、積立てて、利回り5%で運用できると仮定します。
そして、物価上昇率1.0%、年金改定率0.2%、消費支出で原資が減っていくことを加味してシミュレーションすると、次に示すグラフになります。

黄色い丸印は、一つ前のグラフの薄緑色の丸印(改定率0.2%, 物価上昇率1.0%)と同じです。
そのうえに、新NISAへ積立投資していくと、急激に元手の資金が削られていきます。
水色丸印のように毎月3万円ずつ投資すると、元手2000万円の資金は20年で約500万円まで減ってしまいます。
そこで新NISAを解約して積立元本と運用益が戻ってくれば、投資しない場合よりもお金は増えます。

では、物価上昇率と同程度の利回りでしか運用できなかったら?
上記シミュレーションでは、利回り5%を想定しましたが、それ以下の利回りになる可能性もありえます。

定年後から始める新NISAはおすすめしない理由

収入はほぼ年金だけという人が定年後になってから新NISAをはじめるのを、KenUはおすすめしません。
なぜなら、
・想定利回りで運用できる保証はない
・元本割れするリスクがある
・運用中に死亡することもありうる
・突発的に資金を他へ使用する必要が生じ、投資を継続できなくなることもあり得る
・元手資金が減っていくことに焦りが生じ精神が不安定になる
からです。

少しKenUの経験を述べます。
元勤め先の企業で、2014年に確定拠出年金制度(企業型DC)が導入されました。
そして、KenUは定年退職までの8年間だけ、掛け金と退職金の約半分の資金を運用した経験と実績があります。

運用開始当初は、DCセミナーで説明を受けたとおり、国内株式、外国株式、国内債券、外国債券に分散投資していました。
そして、運用益がマイナス(元本割れ)になったこともありました。
運用年数が短いと、途中で失敗すると取り戻すのが難しくなります。
でも、最終的には、会社が設定した想定利回り0.6%よりも高い利回りで退職金を増やすことができました。

でも、資金運用中は、株価変動に一喜一憂して、投資比率を変えたり、投資商品を変更したり、あれこれ考え、悩んで、疲れました。
それに加えて、もっと増やしたいという欲もでて、投資商品選択を間違えたりします。
そんな生活もうしたくはない、というのが正直な感想です。

新NISAシミュレーションのエクセル計算式

各家庭で家計事情は異なるので、資産、可処分所得、消費支出、将来の消費支出などのバランスを考えて、新NISAの運用をシミュレーションするとよいと思います。
なお、シミュレーションの際には、ご自身が早期に死亡し、配偶者が遺族年金で生活していくケースも想定することをおすすめします。

金融庁NISA特別ウェブサイトのシミュレーションも利用できます。
参照リンク→ 金融庁 資産運用シミュレーション


なお、EXCEL(表計算ソフト、エクセル)でシミュレーションすることもできます。
金融庁のシミュレーションの計算は、次に示す積立て複利の計算式になります。

【資産運用シミュレーション計算式】
FV=P × ( ((1+r)^nt – 1 )/ r )
・FV:将来の積立金額(最終積立金額)
・P:毎月の積立金額
・r:想定利回り(月利 = 年利/12/100 ※年率5%の場合; 5/12/100)
・n:積立月数(1~12)
・t:積立年数(1~)

【エクセルの式(積立月数で計算する場合)】
=毎月積立金額*(((1+年利/12/100)^(積立月数*1)-1)/(年利/12/100))

【エクセルの式(積立年数で計算する場合)】
=毎月積立金額*(((1+年利/12/100)^(12*積立年数)-1)/(年利/12/100))

※漢字で書いた部分は「数値」、「参照セル」などを入力します

おわりに

KenUの家計では、新NISAをはじめる必要はないと判断しました。
60歳で定年退職し現在無職なので、年金受給開始できる65歳までは退職金を取り崩していく生活になります。
しかし、65歳以降の収支シミュレーションによれば、物価上昇率を考慮しても資産はそれほど減らない見込みです。

とはいっても、家計に負担をかけない余裕資金で、元本割れも許容できる程度、数千円程度の投資ではじめたら面白いかもしれませんね。
神経をすり減らさない範囲で運用するのが好ましいです。

KenUは企業型DCで失敗も経験していることから、プレジデントの記事に同意する部分が多くありました。

・口座はネット証券一択(楽天証券・SBI証券)
 手数料が安いから

・アクティブファンドを選ぶのは大損
 インデックスファンドより投資成績が悪いから

・インデックスの「全世界型」か「全米型」を選ぶ
 経済成長の源泉は人口増加だから、日本国内の株には投資しないこと

一部引用:プレジデント2023.12.15号、 P.14-P.21、横山光昭 著「『新NISA』で老後資金を増やす6つの大原則」より

加えてKenUが思っている意見を追加するならば・・・
・証券会社アナリストの言うことは信用するな
 高い確率で外れるから


本記事へのコメント、質問等は受付けしかねますので、ご遠慮ください。
また、冒頭にも書きましたが、大事なことなので最後にもう一度書きます。


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