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さて、以前KenUはストーマ装具のパウチに入れる消臭潤滑剤にアダプトやデオールを使用していると書きました。
これらは、便のにおいを抑える消臭成分、パウチからの便の排出を補助する潤滑成分および雑菌の繁殖を抑制する防腐剤を含む、3つの機能を有する水溶性組成物です。
このような製品が販売されているにも関わらず、それらの代替として指定用途を無視して別のものをパウチの中に入れる人がいて、恐ろしく○○な発想なのには驚かされます(笑
軽薄無知って怖いので、その代替物にどんな成分が使用されているのか?、コストはどれくらいなのか?を調べ、KenUなりに考察してみたいと思います。
なお、デオール、アダプトの1回排便あたり(5mL使用)のコストは、それぞれ63円、64円になります。
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「ブレスケア/小林製薬」
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ストロングミントを例にあげると、原材料はヒマワリ油、ゼラチン、パセリ油、香料、グリセリン、アスパラギン酸ナトリウム、甘味料(ネオテーム)、食用緑色3号、食用黄色4号。
50粒あたりの栄養成分表示は、エネルギー:45kcal、たんぱく質:1.9g、脂質:3.2g、炭水化物:2.1g、ナトリウム:1.3~52mg。
パセリ油と香料で便臭をごまかすということですね。
しかし、パウチに何粒入れると消臭効果がでるのかわかりませんが、溶けないと効果ないですよね?
そして、栄養成分が含まれるので細菌が繁殖しそうです。
細菌はたんぱく質、炭水化物が大好きです。
ちなみに、便の水分を除いた固形分の半分以上は大腸菌の死骸です。
また、粒状なので便の排出を助ける潤滑作用はないですよね?
価格は50粒入り定価520円(税込 561円)なので、1回に5粒くらい入れるとして、1排便あたりのコストは56円になるのかな?
リスクおよび効果面から考えて、コストメリットはないように思います。
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「サニーナ/花王」
←Amazonで見てみる。
成分は、ジメチルイソプロピルアズレン、シクロジメチコン、流動パラフィン、スクワラン、無水エタノール。
成分だけを見ても確かに、オイル成分ばかりで潤滑作用がありそうなのがわかります。
ここで注目したいのが、シクロジメチコン(別名メチルシクロポリシロキサン)に流動パラフィンにスクワラン。
これらは、面板をはがすリムーバー(粘着剥離剤)製品に配合される主剥離効果成分の類似成分です。
面板が剥がれ易くならないように、ストーマと面板の間に触れないように注意が必要です。
ジメチルイソプロピルアズレンは、医療用医薬品で青い色のうがい薬アズレンの誘導体です。
ハッカ臭がしてスースーするやつです。
それで、便臭をごまかすというわけですね?
でも、抗炎症作用のある医薬品がなんの異常もないストーマに触れ続けても大丈夫?
そして、エタノール(エチルアルコール)は粘膜刺激性があるのでよくないですね。通常、エタノールの粘膜への使用は禁忌です。
価格は90mL入り600円(税込 648円)なので、1回に2mLくらい入れるとして、1排便あたりのコストは13円になるのかな?
コスト的には安くなるけれど、成分的に問題ありそうなので使用厳禁。
その他にサニーナを面板剥がしに使用している人もいるようですが、KenUが利用しているウエル・カム サポートセンター(←参照リンク)では既に取り扱いを中止しています。
サイトの「ニュース・お知らせ」コーナーにつぎのように書かれているので、引用します。
「2013年02月21日 サニーナ取扱中止のお知らせ 当ショッピングサイトにおけるサニーナの取り扱いを2月20日をもちまして終了とさせて頂きます。従来からストーマ周囲の関連商品として取り扱いをしておりましたが、それに代わる専用商品も多数発売され、また本来はおしりふきであるために取扱は終了とさせて頂きます。」
用途外の使用は何か起こったときにPL問題にならないにしても、メーカーの花王でも歓迎していないはずです。
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「ジョンソンベビーオイル 無香料/ジョンソンエンドジョンソン」
←Amazonで見てみる。
成分は、ミネラルオイル、 酢酸トコフェロール。
成分に消臭効果はなくて、潤滑作用のみを期待してということがわかります。
なお、細菌が繁殖するような成分はありません。
ミネラルオイルというのは石油から得られる液状の脂肪族炭化水素で、鉱物油、ホワイトパラフィンとか流動パラフィンともいわれるものです。
ストーマには問題なさそうです。
というのは、あるグレードの流動パラフィンは、創傷皮膚、つまり傷口に直接貼り付ける創傷被覆剤の構成成分に使用されていて、安全性が確認されています。
創傷被覆剤の製品名は伏せておきますが、分類は医療機器で日本の厚生労働省許認可品です。
また、ミネラルオイルは一部のリムーバー製品と同様の成分です。
酢酸トコフェロールはビタミンEの誘導体で、オイルの抗酸化剤(安定剤)として0.001%以下で添加されています。
低濃度だし、毒性試験結果や薬理作用的にもストーマには問題なさそう。
価格はAmazonで300mL入り送料込 691円なので、1回に2mLくらい入れるとして、1排便あたりのコストはおよそ5円。
と書きましたが、KenUは安全性を保障しませんし、使用の推奨もしませんし、責任持てませんので、誤解しないでくださいね。
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「ファブリーズ/P&G」
←Amazonで見てみる。
成分は、トウモロコシ由来消臭成分、除菌成分(有機系)、水溶性凝集成分、香料、水。
まず、トウモロコシ由来消臭成分というのは、トウモロコシでんぷんから作ったβ-シクロデキストリンという物質で悪臭を包括する効果があり、食品にも添加される物質です。
安全性は問題ないです。
でもこれは、濃縮したものは水飴みたいな感じのもので、ベタベタするので、逆にパウチ内面に便を付着しやすくします。
問題は、除菌成分。
推測では、トリクロサンとか塩化セチルピリジニウム、それから有機酸(安息香酸、クエン酸など)とを併用。
粘膜刺激性があるのでストーマにはよくないと思います。
水溶性凝集成分は、ポリアクリルアミド系高分子かな?
パウチにどれだけ入れたら消臭効果があるのかわからないし、便の潤滑作用はないし、ストーマの刺激性のリスクもありそうなので、価格を調べるまでもなく使用厳禁。
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[9/20追加]
これを入れている人というのは見つけていませんが、入れようと思う人がいるかもしれないので先に書いておきます。
成分は、エチルアルコール、天然由来抽出物(ライム・ベルガモット他)、界面活性剤(植物由来)、除菌剤。
エチルアルコールはストーマにはよくないですね。
それから、ライム、ベルガモットなど柑橘系の精油は、たいていの場合、皮膚や粘膜に刺激性があるのでこれもストーマにはよろしくないです。
界面活性剤は、面板を剥離する性質があるので不安ですね。
除菌剤は何の成分かわからないのでなんともいえませんが、いいことはなさそうです。
ということで、この製品もパウチに入れるのはアウト!
そして、たぶん、パウチに入れても消臭効果は持続しないと思います。
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その他に誰かがパウチに入れているものを見つけたら、成分と影響を調べてこの記事に追加していこうと思います。
それで、ジョンソンベビーオイル無香料をパウチに入れて試してみました。
ポンプボトルから2プッシュしてストーマパウチに入れました。
パウチを手指でしごいて、パウチ内面に広げてなじませました。
うん、確かに潤滑性は良好です。
とっても便が出しやすく、パウチが汚れにくいです。
でもKenU的にはリピはないです。
その一番の理由は、消臭されないから。
それと、排便後にパウチの排出口にたれてついたオイルが拭き取れないのも嫌です。
親油性が高いのでおしりナップでは拭き取れず、ふいた面にオイルの付着が広まっていくので、パウチの外側に誤ってついた場合に気持ち悪い。
ということで、KenUのように神経質な人向きではないですね。
そうそう、それから、鉱物油は生分解性が悪くて浄化槽で処理できないので、トイレに流すのはよろしくないですね。
KenUのお試し実験では量を入れすぎたようなので、ベビーオイルはたれないくらいほんの少量でよいかも。
新しいパウチの装着前に、ベビーオイルをポンプワンプッシュくらいを入れて、ティッシュペーパーで余分をすべてふき取ると同時にパウチ内面全体になじませて、ベビーオイルの薄い層をつくるとか。
そのときに面板の接着面につくと皮膚に接着しなくなるので要注意で、ワンピースの装具ではその可能性が高くなるので、試すならツーピースのパウチのほうが安心?
と書きましたが、推奨している訳ではありませんからね。
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以上、あなたのストーマ大事になさってください。
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