2022 年 6 月 30 日から2022 年 9 月末まで、ピュリナ ワン キャット ドライ 2KGの2製品(避妊・去勢した猫の体重ケア サーモン&ツナ、室内飼い猫用1歳以上サーモン&ツナ)が一時休売になりました(※1)。
私KenUは、以前から、キャットフード入手に関して、リスクマネジメントが必要であると感じていました。
そこで今回の記事は、猫の食餌に関する論文、キャットフードの配合組成の考察を交えながら、我が家のキャットフードの変遷について、紹介します。
※1:現在、弊社オーストラリア工場では、日本にて販売されるピュリナ ワン製品を製造しております。当該製品の需要が継続的に増加する一方、コロナ禍での世界的な物流の混乱などもあり、当該製品の国内在庫水準が総じて低下しており、短期間での在庫回復と安定供給が困難な状況に陥っております。
引用:ネスレ日本株式会社 ネスレピュリナペットケア お客様各位 ピュリナ ワン 製品 一部製品休売のお詫び より
日本ペット栄養学会(→HPリンク)という団体があります。
学会では年2回「ペット栄養学会誌(Journal of Pet Animal Nutrition)」(→サイトリンク)を発行していて、学会誌の論文をJ-STAGEで閲覧することが出来ます。
そして、私KenUは、論文 1) から猫の食性を知りました。
いくつか上げると、次のとおりです。
・猫は幻覚な肉食動物であり、雑食性のイヌと異なる
・β-カロテンをビタミンAに転換できない
・採食パターンがなく、昼夜を問わず何回にも分けて餌を食べる習性がある
・新鮮肉食者(flesh eater)で、腐肉を嫌う
・40℃前後の暖かいものを好む
・好き嫌いの最大の要因は味と匂い
・砂糖の甘味は甘受しない
・塩味に対する感受性は欠如
・肉より魚を好むとはいえない
・動物性脂肪を好み、植物性油は嫌う
・頑固で、空腹でも嫌いなものは頑として食べない
・気まぐれで、喜んで食べていたものをある日突然食べなくなったりする
・エネルギー摂取量を調節する能力がある
・美味しい食餌は沢山食べる
・缶詰フードよりドライフードを与えたほうが尿量が少ない傾向
猫が病気になりにくく、長生きするためのフードは栄養学的見地に基づき、欧米において基準値が設けられています。
AAFCO(※2)によるキャットフードの養分基準、FEDIAF(※3)によるキャットフードの栄養ガイドラインについては、後述することにします。
※1:AAFCO(アフコ)⇒ The Association of American Feed Control Officials(全米飼料検査官協会)
※2:FEDIAF(フェディアフ)⇒ Fédération européenne de l’industrie des aliments pour animaux familiers(European Pet Food Industry Federation・欧州ペットフード工業連合会)
今年2022年からいっしょに暮らし始めた猫のえるちゃんとあおくん。
ごはんのあげ方が難しいと感じていましたが、論文を読みながら「そうなのか!」とうなずきました。
そして、やっと、キャットフードの内容が決まってきました。
以下、その変遷をお話しします。
ねこちゃん達が我が家にやってきた当初、ふたり別々のごはんをあげていました。
成猫(3歳)で避妊手術済みの「えるちゃん」には、飼い主さんの指定で、 ” ヒルズ サイエンス・ダイエット 避妊・去勢猫用 (ドライフード)” を与えていました。
それだけではあまり食べないので ” いなば 金のだし カップ(ウエットフード) ” を加えることもお願いされていました。
仔猫(6か月)だった「あおくん」には、” ニュートロ ナチュラル チョイス 室内猫用 キトン チキン 生後12か月まで(ドライフード) ” をあげていました。
あおくんは、とくに問題ありません。
しかし、えるちゃんは、ヒルズサイエンスに混ぜた金のだしカップのウエット魚肉ばかり食べ、ドライフードの粒はかなり残します。
そのくせ、隙を狙っては、あおくんのニュートロをこっそり食べにいきます。
なお、ドライフードにウエットフードを混ぜると、だし汁で湿ったドライフードの腐敗の問題があり長時間放置できないので、給餌管理が面倒になります。
そのため「えるちゃんは、そんなにニュートロが好きなんかいっ!」ということで、 ” ニュートロ ナチュラル チョイス 避妊・去勢猫用 アダルト 白身魚 ” に切り換えてあげました。
その結果、えるちゃんの食が進み、金のだし カップは不要になりました。
でも、相変わらずあおくんのごはんも狙って食べに行きます。
その一方、今度はあおくんが、えるちゃんのニュートロを狙って食べるようになりました。
レストランに行って、他の人が注文したメニューの方が、自分の注文したメニューよりも美味しそうに感じるあれといっしょでしょうか?(笑
こうなると誰がどっちのフードをどれだけ食べたかわからなくなって、栄養管理が難しくなります。
そのうち、あおくんが、去勢することになりました。
それをきっかけに、えるちゃんと、あおくんのフードを同じ内容に変えました。
つまり、えるちゃん用” ニュートロ ” と あおくん用 ” ニュートロ ” を50:50の割合で混ぜることにした訳です。
これで、お互いのごはんを狙わなくなり、管理がしやすくなりました。
もちろん、フードの成分、ねこちゃんたちのライフステージ、体格を考慮した上での判断です。
それから数か月後。
現在のあおくんは、生後12か月に近づいています。
なので、あおくん用「 生後12か月まで」のニュートロを切り替えたいところ。
また、ニュートロは値段が高いので、もう少しコストを抑えたいという事情もあります。
じつは、ニュートロは近所のホームセンター ” ダイシン ” での取り扱いがないので、Amazonから購入しています。
しかし、我が家において、東日本大震災のときに交通輸送が滞り物資の入手が困難になった経験を考慮すると、インターネット・ECサイトではなく、近所の店頭で入手可能、かつ嫌わず食べてくれるキャットフードを見つけておくことが好ましいと考えていました。
そのような中、ある日、Amazonからピュリナ ワン(避妊・去勢した猫の体重ケア 避妊・去勢後から全ての年齢に )の無料おためしサンプルが送られてきました。
試してみると、えるちゃんもあおくんもがっつくように食べたので、いとも簡単に切り替え可能なごはんが見つかったというわけです。
結論から先にいうと、ピュリナワンへの100%完全切り替えではなく、避妊・去勢猫用ニュートロと50:50の割合に混ぜて給餌しています。
というのは、ピュリナワン単独では、成分的に物足りなさを感じたからです。
メーカーのホームページから調べた成分と、論文 2) からの栄養ガイドラインの養分基準値を一覧表にまとめました。
表中、青色部分がニュートロとピュリナワンを混合した場合の計算値ですが、公表値がなくて不明なものは「?」で示しました。

ピュリナワンは、脂質とタウリンが最小量の基準値程度であり、ニュートロに比べて含有量が少ないです。
論文 3) によれば、脂肪含有率が高いほうが食餌の嗜好性が高まる。
タウリンは猫に必須のアミノ酸で、網膜、心臓、神経、繁殖、免疫調節など重要な役割を持ち、欠乏すると疾病を生じる。
また、オメガ6脂肪酸は必要で、リノール酸は成長、脂肪輸送、表皮バリア、正常な膜構成および機能に必須であり、アラキドン酸欠乏症は、血小板凝集障害、炎症性皮膚病変、雌猫の繁殖障害に関与する。
これらを考え合わせて、ピュリナワンにニュートロを混ぜて成分を補うことは有効であろうと考えました。
ただし、マグネシウムの過剰は下部尿路疾患の原因になり、リンの過剰は腎臓疾患の原因になり、カルシウム(Ca):リン(P)の適切な比率があるということから、ニュートロにそれらの数値が示されていないので、やや気になるところではあります。
という訳で、避妊・去勢猫用のニュートロとピュリナワンを50:50にして給餌していますが、えるちゃんもあおくんも、ニュートロ、ピュリナワン、それぞれ単独でも好んで食べてくれるので、災害発生時などで一方のフードが入手困難になっても大丈夫です。
また、ピュリナワンは、アマゾンでもダイシンでもほぼ同じ価格で購入でき、ニュートロの6掛け前後の値段で購入できるので、お財布にやさしくなりました。
猫のライフステージにおいて、” 成長期の子猫 ”、” ヤングアダルト~中年の成猫 ”、” 高齢~老齢猫 ” で栄養要求量が変化するので、どのフードを選択したらよいかについては、今後も考えていきたいと思います。
ちょっと余談です。
論文 3) によると、一般的なネコの死亡原因の上位は、がん35%、腎疾患25%、心疾患11%。
がんサバイバーのKenUとねこちゃん達とどちらが長生きするか、競争です。
それから、KenUは、えるちゃんがヒルズ サイエンス・ダイエット 避妊・去勢猫用を食べない理由を考察しています。
成分組成的には悪くない、むしろ結構いいのですが、オメガ3脂肪酸が0.6%DMも入っているんです。
この脂肪酸、じつは酸化されやすくて、臭くなりやすいんです。
なので、腐肉を嫌い、味と匂いが好き嫌いの最大の要因である猫、えるちゃんには、酸化されたオメガ3脂肪酸が沢山入って臭いヒルズのフードは食べたくなかったんでしょうね。
オメガ3脂肪酸は、ガイドラインで基準値がないんだから、減らしたらいいのに。
参考文献
1)阿部又信,連載口座:イヌ・ネコの基礎栄養(2)食性、嗜好、食事の摂取量など,ペット栄養学会誌,2(2):70-77,1999
2)阿部又信,FEDIAF(欧州ペットフード工業会連合)による栄養ガイドライン,ペット栄養学会誌,12(2):81-89,2009
3)坂根 弘,連載口座:イヌ・ネコの基礎栄養(14)イヌ・ネコのライフステージと栄養(その2),ペット栄養学会誌,7(2):67-79,2004