7月にストーマ外来に行ったときに、「使ってみてください」とのことで2種類の用手整形皮膚保護材(ストーマシール)サンプルを頂いてきました。
WOCナースさん曰く、「次回ストーマ外来までの宿題」ですって。
そんな訳で、お盆休み以降にサンプル試用を開始し、やっと検討を終了したので以下レポートします。
長~いので、お暇なときに読んでください。
一つ目のサンプルは、dansac(ダンサック)TRE(トレイ)シール(製品番号:072-98)。
平成29年6月1日発売の比較的新しい製品で、KenUはまだ使用経験がありません。
こちらがメインの宿題なので、くわしく検討します。
二つ目のサンプルは、Hollister(ホリスター)Adapt(アダプト)皮膚保護シール(製品番号:7806)。
サイズ違い製品の使用経験があり、TREシールの比較対象として検討します。
【注意!】一応モザイクをかけていますが、KenUのストーマ(人工肛門)の一部画像を掲載しているので、気分を悪くしそうな方は閲覧をお控えください。
----- 目次 -----
1 TREシール
1-1 準備
1-2 試用1回目
1-3 ストーマ装具交換1回目の観察
1-4 試用2回目
1-5 ストーマ装具交換2回目の観察
1-6 試用3回目
1-7 ストーマ装具交換3回目の観察
2 Adapt皮膚保護シール
2-1 準備
2-2 試用1回目
2-3 ストーマ装具交換1回目の観察
2-4 試用2回目
3 TREシールとAdapt皮膚保護シールとの比較
3-1 コスト
3-2 粘着性
3-3 吸液性
4 まとめ
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1.TREシール
1-1 準備
TREシールは白色無地の円盤でプラケースに収められており、録画用DVDのようです。
製品のキャッチコピーは、1.持続する粘着力、2.優れた吸水性、3.即効性のある緩衝作用、です。
KenUはシール製品をストーマ周囲に巻いて使いますが(※1)、最初の試用にあたり、
「はてどのように切り取りましょうか?」
と考え込みました。
メーカーのリーフレットには ” アルキメデスの螺旋(らせん) ” 形状に切り取る使い方の例が掲載されています。
なので、取りあえず真似をしてみることにしました。
←メーカーリーフレットより、模倣図作成
その際、目分量で適当に切ってもよいのですが、「几帳面にきっちり準備をしたほうがレポートにするには面白いかな?」と思ったので、切取り用の目印を書き込みました。
なまえペンで5mm間隔の点を付けます。
螺旋の列が変わる部分は、切り間違えないようにガイド線を書き加えます。
点と線に沿って螺旋状に切り取ります。
初めて使うことから、どのくらいの長さに切ればよいか勘が働かないといった問題がありましたが、なんとか準備完了!
白蛇みたいで縁起が良さそう。
ストーマ装具は、2品系(ツーピース)のホリスター ニューイメージFWFテープ付き(面板)、ニューイメージロックンロール(パウチ)を使います。
つぎに、装具を外して入浴します。
余談ですが・・・
最近は風呂入口ドア向こう床の上にこんな ↓ 準備をして、真っ裸になって音楽を聴きながら(※2)、装具を外し、ストーマを洗浄し(※3)、それからプリンカップをストーマに被せて入浴(※4)しています。
1-2 試用1回目
入浴が終わり、いよいよTREシールの出番です。
裏と表の剥離フィルムを剥がすと、軟らかく、簡単に伸び、結構ぺたぺたした粘着感があります。
ストーマ周囲皮膚に巻き付けるようにして貼り付けます。
5mm幅では細すぎたようで、伸ばして2周巻きにしました。
その上から面板を貼ると隙間なくぴったり。上出来です。
ストーマパウチを装着し、消臭潤滑剤を入れて完了。
さて、ここまでの感想ですが・・・
5mm幅に切取ったのはあまり良くなかったようです。
10mm幅くらいのほうが良いかも知れません。
また、螺旋形状にすると長さが分からなくなるので、リング形状(輪っか)に切取ったほうが、円周率(π=3.14)から長さ計算が出来て、直観的に使用量が分かりやすいような気がしました。
TREシールは、内径18mm、外径98mmのディスク形状なので、10mm幅のリング形状にする場合には、「内径18mm外径38mmの輪」~「内径78mm外径98mmの輪」の4周分を切り取れます(下図、下表参照)。
注意:上表中の取り数は直径3cmのストマの場合を想定。伸ばして使用すれば、取り数を増やせます。
1-3 ストーマ装具交換1回目と観察
TREシールの試用を開始したのが8月12日。
その後の8月15日、3日目ですが、夏場で汗をかいたので装具交換をすることにしました。
ミントの香りのする剥離剤(イーキン リリース スプレーリムーバー)(※5)を使って装具を外します。
TREシールは、面板といっしょに、皮膚に粘着成分を残すことなく綺麗に剝がすことが出来ました。これは、かなりプラスポイントです。
剥がしたTREシールの色は、不透明な真っ白。
もちろん装具面板下への便の潜り込みはありません。
ストーマ周囲皮膚の状態は良好です。
人工肛門造設後に不良肉芽(※6)があったのが嘘のようです。
「夏素肌 馬鹿肉どもが 夢の跡」なんて。
うん、「TREシール、悪くない!!」です。
1-4 試用2回目
試用1回目の経験を活かして、少しやり方を変えてみました。
外側から10mm幅のリング形状に切り取りました。
1周(360°)で2.6回分の計算なので、角度135°程度の長さに切ります。
剥離フィルム(ライナー)を剥がすと、”イカのお刺身”です。
このままストーマ周囲に1周巻いて貼り付けます。
幅は良い感じですが、厚さが2.3mmと厚いのが少し気になります。
でも、その上から面板を貼ってしまえば違和感はありません。
TREシールに限らず、シール製品全般に言えることですが、切取る形状、大きさ等、人それぞれ慣れるまで試行錯誤が必要でしょう。
1-5 ストーマ装具交換2回目と観察
TREシールの2回目試用を開始したのが8月15日。
その後の8月18日、3日間で2回も下痢をしたので装具を交換することにしました。
剥がしたTREシールは、結構膨潤していました。そのぶん皮膚は押され、その部分がほんのわずか凹んでいました。
ストーマと接触するシール周囲は黄褐色に変色していましたが、装具面板下への便の潜り込みはありません。
下痢をしても、ストーマ周囲皮膚は良好な状態を保っていました。
1-6 試用3回目
今回は、1品系(ワンピース)のダンサック ノバ1 フォールドアップに変更し、使い方も変えてみました。
TREシールは前回よりも短く切り取って、少し伸ばして用います。
そうすることで厚みが薄くなり、水分を吸って膨潤したときの圧迫が少なくて良いのではないかと思います。
伸ばして”きしめん”にします。
ストーマ周囲に1周巻きます。
その上からワンピース装具を装着。
ワンピース装具はパウチの外側から面板の穴が見え難く、ツーピース装具よりも装着しにくいですが、ストーマシールを併用すれば、面板の穴をストーマサイズぎりぎりにする必要がなくなり大き目に穴を開けて装具を装着しやすくできるというメリットがあります。
1-7 ストーマ装具交換3回目と観察
TREシールの3回目試用を開始したのが8月18日。
通常KenUはノバ1フォールドアップを2日使用で交換するのですが、今回はメーカーのいう装着期間目安の3日間いっぱい、8月21日まで使用しました。
というのも、下痢の後1~3日間はまった便が出ないことがあり、今回2日間出なかったから。
試用後の装具面板下への便の潜り込みなく、皮膚の状態も1回目・2回目試用後と同様に、まったく問題ありませんでした。
2 Adapt皮膚保護シール
2-1 準備
さて、いよいよTREシールの比較対象、Adapt皮膚保護シールの出番です。
厚さ2.3mm、内径18mm、外径98mmで、製品サイズはTREシールと同じです。
製品のキャッチコピーは、1.排泄物に対し優れた耐久性とpH緩衝作用を発揮、2.やわらかくべたつかないため成形がしやすい、3.皮膚にしっかり密着し腹壁の動きにも追従、です。
まずは、TREシールと同じように5mm幅の螺旋状に切り取って使います。
はい、準備完了。
2-2 試用1回目
ライナーを剥がすと、TREシールと同様ぺたぺたした粘着感があります。
やはり5mm幅では細すぎるので、伸ばしてストーマ周囲に2周巻きました。
上から面板を貼ります。
Adapt皮膚保護シールもTREシールと同じように使用してみましたが、使い勝手はほとんど変わらないと思います。
装着感についても、違いは感じませんでした。
2-3 ストーマ装具交換1回目の観察
Adapt皮膚保護シールの試用を開始したのが8月21日。
その後の8月24日、3日目ですが結構排便があったので装具交換をすることにしました。
装具面板下への便の潜り込みはなく、ストーマ周囲皮膚の状態にもまったく問題はありませんでした。
2-4 試用2回目
今回は、TREシール3回目試用のときと同じようにしました。
一番外側から1cm幅で角度90°程度の長さに切ります。
ライナーを剥がして、ストーマ周囲長さ程度に伸ばします。
ストーマ周囲に1周巻きにして貼りつけます。
シールの伸ばしやすさ、ストーマ周囲皮膚への貼付しやすさなど操作性はTREシールと大きく変わらないように思います。
3 TREシールとAdapt皮膚保護シールの比較
3-1 コスト
価格を比較してみました。
TREシールは3枚/箱で¥2,203 (税込)。
Adapt 皮膚保護シールは10枚/箱で¥ 6,696 (税込)。
それぞれ1枚当たりに換算すると、TREシール734円/枚、Adapt皮膚保護シール667円/枚。
大差ないと思います。
1回使用当たりでは、使用量にもよりますが、KenUと同様の使い方であれば、ざっと100円以下と考えておいたら良いかも知れません。
1日当たりにすると、20円~30円といったところでしょうか。
3-2 粘着性
指タックにより粘着力を比較してみました。
動画から、TREシールの方がAdapt皮膚保護シールよりも、皮膚によく粘着するのがわかります。
それなのにTREシールは、リムーバー使用でストーマ周囲皮膚から綺麗に剥がれるので、KenUとしては気に入っています。
なお、ヒト皮膚に対する粘着性は個人差が大きいので、逆にアダプトの方がよく粘着するという人もいるかも知れません。
3-3 吸液性
吸液性を比較してみました。
吸わせる液体は、浸透圧がヒトの体液に近いものが良いと思ったので、ポカリスエットを使用。
ストーマシールの採取量は、どちらの製品も約1gです。
ポカリに浸けてから2時間後、どちらの製品も約4gに膨潤し、吸液性に大きな違いはありません。
4 まとめ
上記のとおり、今回試用した2種類のストーマシール製品の比較では、使い勝手、操作性、皮膚保護性、価格、物性等に大きな違いはありませんでした。
ストーマシールを使用すると、色々な性状の便(※7)が直接皮膚に触れなくなるので、皮膚保護に関して有益であることは間違いないと思います。
また、下痢をしてもストーマ装具面板下に便が潜り込まなかったことから、ストーマケア及びQOLといった観点からもストーマシールの使用は有意義だと思います。
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余談ですが、宿題なのでWOCナースさんには、「永久人工肛門保有者によるTREシールの使用経験」と題して、内容を整理し直して、論文風のレポートに仕上げて提出したいと思います(笑
【本文中に挿入した過去記事リンク】
※1:ストーマ装具漏れ防止シール製品ってなかなか「いいね!」
※2:AmazonプライムとBOSEで心のラブソング
※3:人工肛門ストーマ装具交換の動画をアップしてみた。
※4:ストーマで困るのはズボンと下着と入浴とセックス
※5:最近、これはいい!と思ったストーマケアアクセサリー
※6:ストーマ造設後およそ3か月での大きさ変化
※7:人工肛門から出る便のpHとストーマ用品のpHはどれくらい?
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夏休み宿題番外編 ストーマシールを精製水に浸けると?
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