安心してください。人工肛門オストメイトは臭くないですから。

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最近はバイクの記事ばかり書いていてすみません。
今回は人工肛門関連の記事です。

さて、KenUのブログのアクセス解析をしてみると、訪問者がどんなことを知りたくてアクセスしてきているのかが想像できます。
そして、”ストーマ 臭い(におい、くさい)” などをキーワードにして検索して来られる方々が結構いて、「人工肛門になって、やはり皆さんニオイを気にされているんだなぁ~」ということがわかります。
おそらく、不安に駆られるのは、においがしないメカニズム、臭ってしまうメカニズムが分からないからではないでしょうか?
ということで、KenUが科学的に解説したいと思います。

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基本的に、ストーマ装具(以下、「装具」と略。)が正しく装着され、装具が正しく機能していれば、オストメイトから便臭がすることはありません。
でも、他からクサイにおいがしても、もしかして自分から?と不安になることもありますよね?
自分の臭いは、自分ではなかなか分かり難いもの。
まずは自分がにおっているかどうか、確かめてみましょう。

方法としては、就寝時に頭から布団をかぶってみるのがもっとも簡単で、もっともわかりやすいです。
それで臭わなければぜんぜんOKです。

臭う原因は3つ考えられます。
影響が小さい順に書くと・・・

(1) 便排出時に装具パウチ外側に便が付着したのに気が付いていない
恐らく、このようなことはほとんど無いのではないかと思います。
「排出口に付着した便が綺麗に拭き取られていないから」と言われることがあるようですが、拭き残りが目視で確認できないレベルであれば問題ないと思います。
そうでなければ、便排泄後にトイレットペーパーでお尻を拭くだけの健常者は、皆くさいということになりますから。

(2) 装具パウチの防臭フィルター機能が弱い
防臭フィルターに使用されている活性炭は、におい成分の吸着性能にキャパシティーがあります。
なので、便の性状や排泄量によっては、防臭フィルター部分からわずかに臭いが漏れるようになることがあります。
しかし、普段からパウチ内に消臭潤滑剤を入れたり、消臭機能のあるカバーを付けるなど、臭いを抑える工夫を併用していれば、気にならないレベルに維持できると思います。
また、メーカー指定目安以上の日数で装具を使用しないということも必要でしょう。

(3) 面板の下に便が潜り込んでいる
これが主要原因であることがほとんどだと思います。
装具パウチは、防臭性に優れたフィルムが使用されているので、中に便が入っていても臭いが透過して外に漏れることはありません。

ですが、面板は、防臭性に劣るフィルムが使用されているので、面板下に便が潜り込むと臭いが透過して外に漏れることになります。
これについては、次にもう少し詳しくメカニズムを説明します。

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ゴミ袋などに使われているポリエチレン製のフィルムは、ガスを通しやすいので臭いを遮断する機能は低いです。
一方、装具パウチは、例えば、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)、EVOH(エチレン-ビニルアルコール共重合体)、ナイロン66(ポリアミド)、PAN(ポリアクリロニトリル)、PET(ポリエチレンテレフタレート)など、ガスバリア性の高いフィルムとヒートシール性のあるフィルムを貼り合せた多層構造になっていて、防湿・防臭機能が高くなっています。
PVDCはサランラップ、PETはペットボトルとしても有名ですね。

ガスバリア性の高いフィルムの炭酸ガス(CO2)透過度は、ポリエチレンの1/100以下です(表1)。
装具パウチは、そのようなガスバリア性の高いフィルムが多層に重ね合わされてできていますから、臭いが外に漏れることはないのです。

表1 各種フィルムのガスバリア製

出典:安田 武夫, プラスチック材料の各動特性の試験方と評価結果(5), プラスチックスVol.51, No.6, pp.119-127 (2000)

装具面板には、発汗によって皮膚保護剤のハイドロコロイドが吸湿したり、皮膚が蒸れたりするのを防ぐために、水分が発散しやすい機能が求められます。
そのような理由で、面板の外表面には、ポリウレタンなどの水蒸気透過度(透湿性ともいう)の良好なフィルムが使用されます。
しかし、そのことは同時にガスバリア性も低下させることになります。

ポリウレタンの炭酸ガス透過度は、PVDCの1000倍以上です(表1)。
面板の粘着性のある皮膚保護剤部分もガスバリア性は低いので、面板の下のフランジ部分より外側にまで便が潜り込むと、臭いが外に漏れることになります。
ちなみに、これが原因で臭いが漏れているかどうかを確かめる方法としては、面板の上を指先でこすって、指先のにおいを嗅いでみるとわかります。

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以上、におわない・臭うのメカニズムがはっきりしましたね。
少し、KenUの体験を書きます。

術後、病院のベッドで布団に頭を突っ込むと、へんなにおいがしました。
臭う原因も理由も何もわからず、「人工肛門のせいで、この先ずーっとこんな臭いを発して生きていくのか?」と思うと悲しかったです。
実は面板の下に水様便が漏れていたんですね。また、そのせいで開腹後縫合部の傷が化膿しました。

点滴から入院食に替わって、水様便が固形便になっても面板の下に潜り込みました。
ストーマ脇にできた大きな不良肉芽のせいで、わずかに皮膚が盛り上がっている部分があって、そこと面板との密着性が良くなかったためです。入院中ずーっと布団の中が臭かった。
退院しても、ときどき面板の下に便が潜り込みました。そうなると自宅の布団の中も臭い。
それで、何も知識がなかったので、特に面板側の対策はしないで、自作の消臭ストーマパウチカバーを開発しました。
頻繁に、指先で面板を擦って指先のにおいを嗅いで、漏れを確認していました。

術後2か月して、はじめてのストーマ外来で不良肉芽を切除してもらい、それからは、面板下に便は漏れなくなりました(※少量ならときどきあります)。
そして、布団の中に頭を突っ込んでも臭くなくなりました。

ということで、臭わないようにするためには、面板の下への便の漏れをいかに制御するか、また、面板の下に便が潜り込んだときにどのように臭気を捕捉・消臭するかがポイントになると思います。

そのときには知識がなかったんだけど、漏れ防止のペースト製品などがあることを今は知っています。
今は便の潜り込みはほとんど生じないのでペーストなどのストーマケア商品を検討する機会がありませんが、時間があるときにでも対策は考えてみたいと思います。

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余談ですが・・・
あるメーカーの装具の特許の文面に興味深い内容を見つけたので紹介します。

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【発明が解決しようとする課題】
前略・・・しかしながら、従来のフラップ固定構造のドレナブル排泄物収容装具においては、下記のような問題があった。
即ち、日常生活の中では、不意にフラップに衣服やその他の接触物が引っ掛かってしまうことがあり、そのような引っ掛かりが生じた場合には、フラップの係合は一気に剥がれてしまう可能性があり、その結果、排泄物の漏れが起こる恐れがあった。・・・後略
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ここでいうフラップとは、便排出口を折り曲げて止めておく面ファスナーのことですが、例えば、腹巻をしていて、それをグッとめくり上げるときなどは注意が必要かもしれませんね。

KenUは、面ファスナーを外そうとしてフラップをグッと引っ張ったときに、勢いが強すぎてパウチを破ってしまったことがあります。

ストーマ装具の取り扱いは丁寧にしましょう。


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