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さて、最近、某バイク屋さんのYouTubeチャンネルで、「バイク用の雨具が新品なのに濡れるのは何故?」という内容の動画を見つけました。
その中で、視聴者の方がバイクの走行速度から雨の衝突圧をシミュレーションして、雨具の耐水圧という視点から原因を追及しています。
それで、YouTubeの計算の前提条件が分からなかったので、KenUの計算の仕方を少し詳しく解説したいと思います。
ちなみに、中学数学と高校物理程度の内容なので難しくないです。
では、以下どうぞ。
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○前提条件・・・雨の落下速度
雨は地上に到達するまでに、空気抵抗によって落下速度が一定の終末速度に達します。
そして、粒の大きさで終末速度が変わります。
空気抵抗の計算が複雑で、研究者によって計算の仕方が異なるので、終末速度の計算値は変わります。
KenUは、一宮先生の数値を使用します。
つまり、
雨粒直径0.2mm=終末速度1.2m/s
雨粒直径1.0mm=終末速度3.0m/s
雨粒直径3.0mm=終末速度5.5m/s
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○前提条件・・・モーターサイクルでの走行時の雨の衝突速度(v)
雨は無風状態で垂直に落下するものとします。
バイクの時速を換算(Km/h→m/s)して、三平方の定理で、雨粒の衝突速度(m/s)を求めます。
※バイクイラストはYAMAHA RevNoteのまねです。
3mm雨粒(5.5m/s)、バイク時速30Km(8.33m/s)のときは、9.98(m/s)
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○前提条件・・・雨粒の重量(m)
雨粒の半径から球体の体積(cm3)を計算し、水の密度(g/cm3)=1として、重量(Kg)を求めます。
球の体積=4/3πr^3
3mmの雨粒の体積は、0.0141372(cm3)、重量は0.0000141372(Kg)
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○前提条件・・・単位面積当たりの衝撃力
以前は、雨粒の中心の断面積の数値を使いましたが、今回は少し変えてみます。
半径(r0)の雨粒が衝突して、半分に潰れたときの衝突面半径(r)を計算して、そこから衝突面積を求めます。
3mm雨粒の場合、上図点線球と1/2扁平球体の体積が同じとして、扁平球体の体積=4/3πab^2から逆算して、r=2.1213(mm)、面積は0.1413717(cm2)
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○前提条件・・・減速時間(Δt)
減速時間とは、ある速度でぶつかって、速度がゼロになる時間。
わかりやすく言うと、雨がペチャっとあたって止まる瞬間の時間
雨粒の直径(m)を衝突速度(m/s)で割って、時間(s)を求めます。
3mm雨粒、衝突速度9.98(m/s)の場合、0.0003005(s)
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○前提条件・・・その他
衝撃力は、
F(N)=mv/Δt
重力加速度は、
9.80665(m/s2)
とし、
N→N/cm2→Kgf/cm2→mmAqを計算していきます。
3mm雨粒、バイク時速30Kmのときは、0.4698(N)→3.3231(N/cm2)→0.3389(kgf/cm2)→3389mmAq
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○計算結果
で、計算結果から、それぞれの大きさの雨粒のときのバイク走行速度と雨があたったときの圧力(水柱mm)の関係をグラフにすると・・・
になりました。
暴風雨で雨の速度が変わるとか、衝突面積をどう考えるかとか、計算の前提条件が変わると、結果もまた変わってきます。
今回の計算では、YouTubeの結果と同様に、バイクに乗るときは、耐水圧10,000mm程度の防水性の雨具では物足りないという結果になりました。
一つの単純な計算モデルでの計算なので、風圧がどうだとか、温度で水の密度は変わるだとかは無視しています。
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ちなみに、座ったときにお尻にかかる圧力というのは、褥瘡や車いすなど医療上の問題で耐圧分散といった観点からよく研究されていて、強いところで180mmHg(水柱2,400mmAq)くらいの圧力がかかります。
なので、耐水圧2,000mm程度の雨具だと、濡れたシートに座るとお尻は濡れるんでしょうね。
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で、最後に少し・・・
実は、2012年に書いた「10Bar,10気圧防水(Water Resistant 100m)時計で水泳できる?」という記事の中で、防水時計はバイク走行中の雨に耐えられるか?という内容で、同様にシミュレーションしています。
その記事は、「自称時計好き」の人達から批判・誹謗中傷をあびて、「OKWAVE(教えてGoo)」にも削除要請したけど争いに負けたので、一端削除してリンクを切って2014年に再アップしたという経緯があります。
KenUは結構嫌味で不真面目っぽい奴に見えたり、神経を逆撫でするようで、敵を作りやすいというのも原因なんでしょうけどね(笑。
で、今回の記事では、前提条件が違うのでYouTubeで紹介されている数値と今回KenUの計算値とでは、ずれがありますが、基本的に計算も結果もほぼ同じです。
だから、今回の記事は誹謗中傷されないかな?と思うとちょっと安心です。
どちらの結果が、正しいとか、正しくないとか、ということではなく、このように計算するとこうなりますよという説明です。
また、雨具の性能を保障するものではないということをご了解ください。
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